社会人のための学び直し数学【高校数学2次関数編その2】
2.2次関数のグラフ
実数は数直線上の点の位置で表現できます。例えば一辺の長さが $${1}$$ の正方形の対角線と同じ長さのヒモを用意し,その左端を基準点 O(実数の $${0}$$ に対応する点)におき,それがたるまないように数直線上においたとき右端の位置が $${\sqrt{2}}$$ という実数です。
逆に数直線上の一点は必ずある実数に対応しています。よって,数直線上の点の位置を指定するには,実数を一つ指定すればよいのです。
平面上の点の位置についてはどうでしょう。今度は一つの直線上だけでなく,縦と横の面上の広がりをもった中での点の位置になります。それにはまず,基準点 O(実数の $${0}$$ に対応する点)を通る,二本の直交する直線を引きます。中学数学でも扱う座標平面です。この座標平面上で例えば $${(3,5)}$$ の点の位置を指定してみましょう。横の数直線(普通,水平に引いた直線で,これを $${x}$$ 軸といい,右向きを正とする直線)上で,実数 $${3}$$ を目盛り,縦の数直線(先の $${x}$$ 軸に垂直に引いた直線で,これを $${y}$$ 軸といい,上向きを正とする直線)上で,実数 $${5}$$ を目盛ります。そして,それぞれの実数から,互いの軸に平行に線を引いて,その交わったところが点 $${(3,5)}$$ の位置となります。
このように,平面上の点の位置を指定するには,実数を二つ指定すればよいのです。そして,点 A $${(a,b)}$$ を与えたとき,$${a}$$ を点 A の $${x}$$ 座標,$${b}$$ を点 A の $${y}$$ 座標といいます。
それでは,$${y=x^2}$$ という $${x}$$ についての 2 次関数を座標平面上で表すことを考えてみましょう。まず,$${y=x^2}$$ の $${x}$$ に具体的な数値を代入して,それに対応する $${y}$$ の値を表に書いてみます。
そして,これを座標平面上にとると,図 2-1 のようになります。
二つの異なる実数の間には,その二つの実数と異なる実数を必ず見出せるので,上の表のような $${y=x^2}$$ を満たす点 $${(x,y)}$$ をすべて集めたものを図示すると,図 2-2 のような放物線になります。(物を放り投げたときの,その物の描く軌跡が文字通りの放物線です。)
この放物線を 2 次関数のグラフといいます。
次は,座標平面上でのグラフの移動について考えます。
上述の通り,2 次関数のグラフは放物線となりますが,普通 $${y=f(x)}$$ という関数があれば,その関数に特有のグラフを描くことができます。(例えば $${a,b}$$ を定数とすると $${x}$$ の 1 次関数 $${y=ax+b}$$ のグラフは直線になります。)
ここで,$${y-q=f(x-p)}$$ と $${y=f(x)}$$ のグラフの関係を考えます。
$${x-p=X,y-q=Y}$$ とおくと $${y-q=f(x-p)}$$ は $${Y=f(X)}$$ と書けるので,そのグラフの形状は $${y=f(x)}$$ と一致します。ところが,実際の $${x,y}$$ は $${x=X+p,y=Y+q}$$ を満たすので,$${y=f(x)}$$ 上の点 $${(X,Y)}$$ について,$${X}$$ に $${p}$$ を,$${Y}$$ に $${q}$$ を加えたものとなっていて,これは,$${y=f(x)}$$ 上の点 $${(X,Y)}$$ のすべてについていえることなので,結果,$${y-q=f(x-p)}$$ は,$${y=f(x)}$$ のグラフを $${x}$$ 軸方向に $${p}$$,$${y}$$ 軸方向に $${q}$$ 移動したものになります。これを $${y-q=f(x-p)}$$ のグラフは $${y=f(x)}$$ のグラフを $${x}$$ 軸方向に $${p}$$,$${y}$$ 軸方向に $${q}$$ 平行移動したものであるといいます。
ところで,図 2-2 の放物線の $${(0,0)}$$ という点に着目すると,その左側と右側でグラフの様子が変化することがわかります。点 $${(0,0)}$$ の左側では,$${x}$$ の値が増加するにつれて $${y}$$ の値が減少しています。式で表すと $${x_1<x_2<0}$$ に対して $${f(x_1)>f(x_2)}$$ です。逆に点 $${(0,0)}$$ の右側では,$${x}$$ の値が増加するにつれて $${y}$$ の値が増加しています。式で表すと $${0<x_1<x_2}$$ に対して $${f(x_1)<f(x_2)}$$ です。($${x_1}$$ や $${x_2}$$ の添え字の $${1}$$ や $${2}$$ は,二つの $${x}$$ 座標が異なることを表現するために付けたものです。)
さらに,点 $${(0,0)}$$ を通り $${x}$$ 軸に垂直に立てた直線(図 2-2 の場合は特に $${y}$$ 軸)から等距離にあるグラフ上の点の $${y}$$ 座標はどれも等しくなっています。別の言い方をすると,点 $${(0,0)}$$ を通り $${x}$$ 軸に垂直に立てた直線($${y}$$ 軸)でグラフを折り返すと,直線の左側と右側がぴったり重なるのです。この $${x}$$ 軸に立てた直線を,グラフの対称軸といい,点 $${(0,0)}$$ を放物線の頂点といいます。
すると,$${y-2=(x-3)^2}$$ すなわち $${y=(x-3)^2+2}$$ のような 2 次関数のグラフの様子がわかってきます。$${y-2=(x-3)^2}$$ のグラフは $${y=x^2}$$ のグラフを $${x}$$ 軸方向に 3,$${y}$$ 軸方向に 2 平行移動したものであり,平行移動によって頂点は頂点に移動し,対称軸は $${x}$$ 軸方向に 3 だけ移動して $${y}$$ 軸が $${x=3}$$ という直線(直線 $${x=3}$$ は $${y}$$ の値によらず $${x}$$ 座標が 3 である直線を表しているので,点 $${(3,0)}$$ を通る $${x}$$ 軸に垂直な直線)になるはずです。すなわち,2 次関数 $${y-2=(x-3)^2}$$ あるいは $${y=(x-3)^2+2}$$ の頂点の座標は $${(3,2)}$$ であり,対称軸の式は $${x=3}$$ となります。
【注】$${y=(x-3)^2+2}$$ はこれを展開して整理すると $${y=x^2-6x+11}$$ と書くことができます。自ら確認して見てください。
一般に 2 次関数 $${y=ax^2}$$ のグラフを $${x}$$ 軸方向に $${p}$$,$${y}$$ 軸方向に $${q}$$ 平行移動したグラフは,
2 次関数 $${y=a(x-p)^2+q}$$
または
$${y=ax^2-2apx+ap^2+q}$$
のグラフとなります。よって,2 次関数 $${y=ax^2+bx+c}$$ を考えるとき $${y=ax^2-2apx+ap^2+q}$$ と比べることで,$${b=-2ap,c=ap^2+q}$$ から
$$
p=-\dfrac{b}{2a},q=-\dfrac{b^2-4ac}{4a}
$$
となるので,2 次関数 $${y=ax^2+bx+c}$$ のグラフは
点 $${\left (-\cfrac{b}{2a},-\cfrac{b^2-4ac}{4a}\right)}$$ を頂点
$${x=-\cfrac{b}{2a}}$$ を対称軸
とする放物線となるのです。
練習問題 2 次関数 $${y=2x^2+4x+7}$$ のグラフの頂点の座標を求めよ。
【答】$${(-1,5)}$$
【解説】$${y=ax^2+bx+c}$$ とすると $${a=2,b=4,c=7}$$ だから
頂点の $${x}$$ 座標は
$$
-\cfrac{4}{2×2}=-1
$$
頂点の $${y}$$ 座標は
$$
-\cfrac{4^2-4×2×7}{4×2}=5
$$
以上より,頂点の座標は $${(-1,5)}$$ である。