見出し画像

社会人のための学び直し数学【高校数学三角関数編その4】

4.余弦定理

 今回は余弦定理です。
 斜辺の大きさが $${r}$$ の直角三角形と,その一つの鋭角 $${θ}$$ の三角関数 $${\mathrm{sin}θ}$$,$${\mathrm{cos}θ}$$ の値との関係は,図 4-1 で確認できるように鋭角 $${θ}$$ と向かい合う辺の長さが $${r\mathrm{sin}θ}$$ で,鋭角 $${θ}$$ を挟んでいる斜辺でない方の辺の長さが $${r\mathrm{cos}θ}$$ です。

図 4-1

これを使うと,下の図 4-2 において

$${a=c}$$ $${\mathrm{cos}B+b}$$ $${\mathrm{cos}C}$$ ―①

という式が導けます。

図 4-2

$${△\mathrm{ABC}}$$ の頂点 $${\mathrm{A}}$$ から辺 $${\mathrm{BC}}$$ に垂線 $${\mathrm{AH}}$$ を下ろし,$${\mathrm{BC}=a}$$,$${\mathrm{CA}=b}$$,$${\mathrm{AB}=c}$$ とし,頂点 $${\mathrm{A,B,C}}$$ での三角形の内角をそれぞれ $${A,B,C}$$ とします。すると直角三角形 $${\mathrm{ABH}}$$ で $${\mathrm{BH}}$$ は $${B}$$ を挟んでいる斜辺でない方の辺なので $${\mathrm{BH}=c}$$ $${\mathrm{cos}B}$$ であり,直角三角形 $${\mathrm{ACH}}$$ で $${\mathrm{CH}}$$ は $${C}$$ を挟んでいる斜辺でない方の辺なので $${\mathrm{CH}=b}$$ $${\mathrm{cos}C}$$ となります。よって,

$${a=\mathrm{BH}+\mathrm{CH}=c}$$ $${\mathrm{cos}B+b}$$ $${\mathrm{cos}C}$$

となって ① が成り立ちます。
そして,残りの頂点 $${\mathrm{B}}$$ や $${\mathrm{C}}$$ から向かい合う辺に垂線を下ろし,同様の考えから

$${b=a}$$ $${\mathrm{cos}C+c}$$ $${\mathrm{cos}A}$$ ―②
$${c=b}$$ $${\mathrm{cos}A+a}$$ $${\mathrm{cos}B}$$ ―③

が成り立ちます。
 ところで,図 4-2 のように頂点からその向かい合う辺に下した垂線の足(ここでは,垂線と辺の交点を垂線の足とよぶことにします)が辺上にある場合は,上述のとおりで納得できると思いますが,図 4-3 のように,垂線の足が辺の延長上にある場合はどうでしょうか。辺を延長する側の内角が鈍角になっている場合です。

図 4-3

図 4-3 では,辺の長さや角の表記は図 4-2 と同じとしますが,$${C}$$ が鈍角で $${\cfrac{π}{2}<C<π}$$ となっています。すると,

$${a=\mathrm{BH}-\mathrm{CH}}$$

であって,
 直角三角形 $${\mathrm{ABH}}$$ で $${\mathrm{BH}=c}$$ $${\mathrm{cos}B}$$
 直角三角形 $${\mathrm{ACH}}$$ で $${∠\mathrm{ACH}=π-C}$$ より $${\mathrm{CH}=b}$$ $${\mathrm{cos}(π-C)}$$
となっています。ところで前回 $${\mathrm{cos}(π-θ)=-\mathrm{cos}θ}$$ という公式を紹介しました。
したがって,
 $${a=c}$$ $${\mathrm{cos}B-b}$$ $${\mathrm{cos}(π-C)}$$
  $${=c}$$ $${\mathrm{cos}B-(-b}$$ $${\mathrm{cos}C)}$$
  $${=c}$$ $${\mathrm{cos}B+b}$$ $${\mathrm{cos}C}$$
であり,図 4-3 のような場合でも ① が成り立っていることがわかります。

[参考]$${C=\cfrac{π}{2}}$$ のときは $${\mathrm{cos}C=\mathrm{cos}\cfrac{π}{2}=0}$$ なので,この場合も ① は成立しています。

改めて,①~③ を書き出すと

$${a=c}$$ $${\mathrm{cos}B+b}$$ $${\mathrm{cos}C}$$ ―①
$${b=a}$$ $${\mathrm{cos}C+c}$$ $${\mathrm{cos}A}$$ ―②
$${c=b}$$ $${\mathrm{cos}A+a}$$ $${\mathrm{cos}B}$$ ―③

となりますが,これを第一余弦定理といいます。

 さて,①~③ をもとにして,3 辺の長さが与えられた三角形で,三角関数の値を得る(ここでは特に $${\mathrm{cos}}$$ の値を得る)ための式を導いてみましょう。
三角関数は ①~③ の 3 つの式に,$${\mathrm{cos}A}$$,$${\mathrm{cos}B}$$,$${\mathrm{cos}C}$$ と 3 つあるので,これらの連立方程式として解けるはずです (未知数の数だけ式があれば,基本的には未知数が決定できます)。ここでは,$${\mathrm{cos}A}$$ を求める(3 つの式から $${\mathrm{cos}B}$$,$${\mathrm{cos}C}$$ を消去する)ことを考えましょう。
$${②×b-①×a}$$ より
 $${b^2-a^2=ab}$$ $${\mathrm{cos}C+bc}$$ $${\mathrm{cos}A-(ca}$$ $${\mathrm{cos}B+ab}$$ $${\mathrm{cos}C)}$$
ゆえに,

$${b^2-a^2=bc}$$ $${\mathrm{cos}A-ca}$$ $${\mathrm{cos}B}$$ ―④

$${③×c+④}$$ より
 $${c^2+b^2-a^2=2bc}$$ $${\mathrm{cos}A}$$
よって,

$${\mathrm{cos}A=\cfrac{b^2+c^2-a^2}{2bc}}$$

と求められます。
$${\mathrm{cos}B}$$,$${\mathrm{cos}C}$$ についても同様に,

$${\mathrm{cos}B=\cfrac{c^2+a^2-b^2}{2ca}}$$

$${\mathrm{cos}C=\cfrac{a^2+b^2-c^2}{2ab}}$$

と求められます。
そして,これら 3 つの分母をはらって(分数の分母を式の両辺にかけて)少し整理すると

$${a^2=b^2+c^2-2bc}$$ $${\mathrm{cos}A}$$
$${b^2=c^2+a^2-2ca}$$ $${\mathrm{cos}B}$$
$${c^2=a^2+b^2-2ab}$$ $${\mathrm{cos}C}$$

となります。これが第二余弦定理です。普通,余弦定理といえばこちらの第二余弦定理を指していて,高校数学で学習する余弦定理は第二余弦定理のことです。
余弦定理(第二余弦定理)は三角形において,2 辺の長さと一つの角の値からもう一つの辺の長さを求めたり,3 辺の長さがわかっているときに三角関数の値を求めるため,ひいては内角の大きさを求めるために使います。

【練習問題】$${△\mathrm{ABC}}$$ において,$${\mathrm{BC}=1+\sqrt{3}}$$,$${\mathrm{CA}=2}$$,$${\mathrm{AB}=\sqrt{6}}$$ のとき $${∠\mathrm{ACB}}$$ の大きさを求めよ。

【答】$${∠\mathrm{ACB}=\cfrac{π}{3}}$$

【解説】$${△\mathrm{ABC}}$$ で $${\mathrm{BC}=a}$$,$${\mathrm{CA}=b}$$,$${\mathrm{AB}=c}$$,$${∠\mathrm{ACB}=C}$$ とすれば,余弦定理(第二余弦定理)の
  $${\mathrm{cos}C=\cfrac{a^2+b^2-c^2}{2ab}}$$
から
  $${\mathrm{cos}C=\cfrac{(1+\sqrt{3})^2+2^2-(\sqrt{6})^2}{2×(1+\sqrt{3})×2}}$$
となる。
これより
  $${\mathrm{cos}C=\cfrac{4+2\sqrt{3}+4-6}{4(1+\sqrt{3})}}$$
すなわち
  $${\mathrm{cos}C=\cfrac{2(1+\sqrt{3})}{4(1+\sqrt{3})}=\cfrac{1}{2}}$$
となる。よって,$${∠\mathrm{ACB}=C=\cfrac{π}{3}}$$ である。

いいなと思ったら応援しよう!

MaruSun
よろしければ応援お願いします。いただいたチップをモチベーションの糧に,より良い記事を上げていけるよう頑張ります。