見出し画像

パワハラからの回復ーパワハラの相談件数は増加傾向

近年、パワハラの相談件数は増加傾向

厚生労働省(平成28年度)は、全国の企業や団体に勤務する男女9,000名を対象に、パワハラに関する実態調査をインターネットで行い、パワハラの被害状況や解決における取組状況を発表しています。

パワハラ被害相談状況

従業員向けの相談窓口で従業員から相談の多いテーマの上位3項目を挙げると、

・ パワハラ(32.4%)

・ メンタルヘルス不調(28.1%)

・ 賃金、労働時間等の勤労条件(18.2%)

パワハラの相談件数は多いことが確認されています。

さらに、過去3年間にパワハラを受けたことがあると回答した従業員は、平成24年度実態調査では、25.3%でしたが、32.5%に増加していることがわかりました。

実際のパワハラ相談例はどんなものがあるのかというと・・・

・部下が出した結果をいつも自分の手柄にし、自分の失敗は部下の責任だと押し付けてくる。
・簡単な仕事ばかり与えられ、結果を見てほしいと上司にアポをとっても一向にみてくれない。しかも他の同僚には適切に対応している。
・上司の確認不足で納期が遅れ自分が不利な状況になった。そのことを指摘すると感情的に攻撃するメールを送り続けてきた。

などの相談例があります。


パワハラによる心身への影響とは?

永冨(2016)の研究では、実際に職場でハラスメントを受けたときにどのようなプロセスで高いストレスになっていくかをモデル化しています。図1でハラスメントの影響を示しました。

パワハラ

まず、ハラスメントを受けた人は、

① 職場の人間関係のストレッサーが生じる
       ↓
② 仕事の要求度、裁量度が高まる
       ↓
③ 心理的ストレスにつながる

その結果、イライラ感、疲労感など心身の問題などで表れてきます。

この研究結果で報告されたように、ハラスメントにより仕事上の人間関係、仕事そのものに影響を受け、その結果ストレス反応が出てくることがわかります。

パワハラが深刻化すると?

パワハラによるストレス状態は、短期間でも心身に負担をかけることが予想されますが、ストレスが長期化、また重篤な場合に心的外傷後ストレス障害(Post traumatic stress disorder; PTSD)につながることもあります。

PTSDとは、強烈なショック体験、強い精神的ストレスが、こころのダメージとなって、時間がたってからも、その経験に対して強い恐怖を感じるものです。

また日常生活で似たような場面に遭遇したときなどに強い恐怖を感じたり、別の状況にも関わらず、自分のショック体験に結び付けてしまうことがあります。

たとえば、


・上司からの叱責の場面を思い出してしまう。
・職場に近寄れなくなる。
・仕事のことを考えるだけで腹痛や頭痛がする。

などがおこることがあります。

小西, 金子, 大塚(2018)では、パワハラによりPTSDなどの症状が出た労働者の回復には長期間の時間がかかる可能性があることを報告しています。

例えば、パワハラの被害を受けて休職となった場合に

■環境的な問題(会社とのパワハラ問題の解決)
パワハラと休職の因果関係を認めてもらうためのやりとり
復職に関する相談

■心身の治療 (現在の症状を改善する)
身体的な症状や精神的な症状が出た場合に体調を整える
仕事に復帰してから自分らしく働けるようになるまでのフォローアップ

■経済的な問題(今後の生活に対する不安)
休職期間の経済的な問題
復職にあたり経済的な状況を話し合う

など、心身の治療以外にも取り組まなければいけない問題はたくさんあります。まずは、環境が整わないことには安心して休むことはできません。

パワハラの問題を会社とのやり取りの中ですぐに解決できれば良いですが、時間がかかる場合も多いものです。体調が万全ではないにも関わらず今後の見通しが立たない状態では今後の生活に対して不安も高まります。

以上のように環境・心身・経済状況などの領域に支障をきたす問題だからこそ本来の自分自身の心身の健康を取り戻すには時間がかかると言えるのかも知れません。

引用文献

小西聖子, 金子雅臣, & 大塚雄作. (2018). ハラスメント被害者の心理的回復. 教育心理学年報, 57, 309-328.

永冨陽子. (2016). 職場のハラスメント状況下におけるストレッサ―の生起過程. 大阪経大論集, 66(5), 243.


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?