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パン屋で働き始めたら血が通った

桃色からサーモンピンク。血色が良くてつやもある。
自分の爪をまじまじ眺めて、毎日手や腕に力を込めるようになって血が通ったな、と改めて思った。

パン屋は重労働だというのよく聞く話だ。私も耳にしたことがあった。実際働いてみると、店にいる間はひたすら動いている。
「実は転職したんだ、パン屋さんなんだ」という話を人にすると、「パン屋さん」のかわいらしい響きと現実の慌ただしい仕事の温度差に喉の奥がもぞもぞして、聞かれてもいない大変さを話し始めそうになってしまう。

一斤サイズに2玉、2斤サイズには4玉。生地を成形して型に詰めていく。このひと玉は、発酵が済んだ20キロくらいの塊から切り出して、丸めて作る。
限られた時間で今日のパンと明日のパンを作る。さっきの自分たちがやった次の作業が、今の目の前の仕事に制限時間を作る。追い越されないように必死で、徒競走を何度もしているような慌ただしさ。一個一個ちゃんと作るけれど、間髪入れずに丸めていく。

この作業をしているときに青いビニル手袋とまくった袖口の間に見えている素肌の腕が、真っ赤だった。あぁ血の色だぁ、と頭にぼうっと浮かんだ。

この翌日、お休みの日に私は献血に行きました。
そんな人間です。


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