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心にコタエた歌 2

『蛍』サザンオールスターズ

 映画『永遠の0』の主題歌。ここ数年、個人的に戦争遺跡や記念館、靖国神社など、先の大戦に関連する施設を訪れている。私は 長崎における原爆の一号被爆者である父を持つ。ちなみに 原爆投下を正確に表現するなら『多数の罪なき人々に対し、広島とは違う原理で爆発する新型爆弾の殺傷効果を実験するため、あえて長崎という街を狙った殺戮兵器を落とされた』ということである。

 母方の大叔父は海軍の陸上攻撃機に偵察員として搭乗し、当時日本を、また世界を驚かせた渡洋爆撃に参加した。戦闘機の護衛なしで重い爆弾を積んだ九六式陸上攻撃機は、上空で敵の護衛戦闘機に遭遇した。戦闘機と陸上攻撃機では機動性においては勝負にならない。そもそもの目的が違うからだ。空戦の末、大叔父は撃墜された機と運命を共にした。まだ見ぬ子供をお腹に抱えた妻を故郷に残したまま27歳で戦死していた大叔父。私はどうしてもその時の状況を知りたくて自分でも随分調べた。手間も時間もかかったが 最後は厚生労働省にも問い合わせ、事実をつなぎ合わせる作業を行った結果、大叔父が搭乗した機を撃墜した敵の兵士については2人のうちいずれか、というところまで絞ることができた。もちろん そうだからといって恨みもなければ憎しみもない。戦争とはそんなものである。しかしそんな経緯もあって、同じ時代に国や家族を守るために命をささげた特攻隊には大いに思い入れがある。

 初めて『永遠の0』に触れたのは、制作順とは逆にTVドラマ(主演 向井 理さん)からだったが、程なく映画(主演 岡田 准一さん)も観ることになった。いずれの俳優も力量は十分、あくまで切なく悲しいストーリーに桑田佳祐さんの歌声が沁みる。息子と鹿児島を訪れ、旧海軍航空隊跡にある 鹿屋航空基地史料館の見学を終えて外に出た時 息子がポツリ言った。『この空から征ったんやなぁ』『そうやなぁ』。2人で見上げた鹿屋の青い空を見て、頭の中でこの歌のイントロが聞こえるようだった。

  〽涙見せぬように
   笑顔でサヨナラを
   また逢うと約束をしたね・・・。

 戦争賛美や右傾化がひどいなど、原作の小説やドラマ・映画にケチをつける人も多いが、私は全くそうは思わないし日本人が忘れてはいけないことだと思う。そんな意見の中、かのジブリの宮崎駿氏もケチをつける側の人だったことを知ったのは残念だった。


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