今さらながら刺身を語ろう 6
-淡水域、汽水域の魚-
《スズキ(テーマ画像)》
真水が混じったような 塩の薄い環境を住まいとする魚の代表格は スズキになるんだろうか。欧米の人たちは この魚を高級かつ美味だと感じるらしく、料理の食材としては確固たる地位を確保している。我が国においてもスマしたフレンチなんかによく登場するし、高級な寿司屋では『洗い』に仕立てて、夏の風物詩だったりもする。
しかし真水の入り込まない海がフィールドだった私にとっては、スズキはその身に泥臭さがあるイメージがどうしても付きまとう。『洗い』にしたってそれは払拭できない。スズキは出世魚としても有名で、成長に合わせてセイゴ、フッコ、スズキと名を変える。池や湖のバス同様、ハリにかかると引くわ暴れるわでレジャーとして面白いから この釣りを専門にやる人も多いのだが、いかんせん私には臭いのマイナスイメージがあっていただけない。考えると私は魚を食べ物としか見ていないのだろうと思う(しかし琵琶湖を擁する滋賀県では、一時期ブラックバスを給食に提供してたんだそうな。一度だけなら食ってみたい気もするw)。
生前親父が 私が釣ったブラックバスの写真を見て『寸の足らんスズキ』だと、まるで新種のように言っていたが、確かにスズキとブラックバスは種として近く、姿もよく似ている。
〘ボラ〙
魚に詳しくない人たちにはあまり知られていない魚であるボラ。一般的には市民権は得ていない感じだ。こいつも汽水域に入り込む。そしてブリ同様出世魚であり、オボコ、イナッコ、スバシリ、イナ、ボラ、トドと呼び名が変化する。それ以上はないという『トドのつまり』の語源である。
ボラの腹の中には『へそ』と呼ばれる鶏の砂肝みたいな器官があって、塩焼きにして食べると美味いと評判だけど、ひねくれものの私に言わせると特別に美味いものでもない。この器官、ボラの食性に関係が深い。なんでもボラは海底の泥を丸呑みするから砂を濾すところが必要になったという。臭いはずだ。
ボラの卵巣を塩漬けにした 我が長崎特産の『からすみ』は値段を見間違ったか? と思うくらい高い。高級すきやき用牛肉の10倍近い値段といえばわかりやすいだろうか。100gで1万円もしたら、庶民の感覚なら 珍しいから食べてみようとは思わないんじゃないかな(笑) かくいう長崎県人の私とてほんの数回、しかも端っこの方をかじった経験しかないが、珍味というものはあくまで珍味であり、万人に受け入れられるようなポップな味ではダメなんだろう。
スズキやボラはとにかくデッカくなる。スズキ(テーマ画像)は最大120㎝超えの記録があるし、ボラも『トド』クラスになると1m近くになる。ボラは普段はスズキみたいに速く泳がない(そんな印象。しらんけどww)から、大型の魚体が河口にヌーッと出てきて我が物顔でゆっくり泳ぐ姿を見ると、魚体の色が黒っぽいこともあり、音もなく進む不気味な潜水艦のようである。
〘チヌ = クロダイ〙
スイカで釣れる魚。チヌ。なんでヤツラはそんなものを食うのかは知らないが、昔 出来損ないのスイカを割って、いたずらに桟橋から投げたことがある。すると1分もしない内に、大きなチヌ(40㎝級)が私の足元の水面まで上がってきて驚いたことがある。
しかしスズキやボラ同様、クサくてかなわんことには変わりはない(笑) 私には淡水というものの混じった所に棲むヤツらとは、どうしても仲良くなれない。