おばさんやおじさんが作ります
『りくろーおじさんのチーズケーキ』というお菓子は、関西では絶対的な地位をしめる。『お手軽な手土産界』においてこれほどあらゆる項目において合格点を獲得できる一品があろうか。誰かの家にこれを持っていくと、『おもたせ』として自分も食べることになる割合においてもチャンピオンなんじゃないだろうか。私は歳をとってケーキの類は少々辛くなってきたが、こいつを冷たく冷やしたヤツは好きで、冷蔵庫にあったりすると嬉しい。販売店ではしばしば買い求める人の行列ができる。オーブンで焼かれ焼印が押されるケーキたちをガラス越しに眺め、『フルフルやなぁ』とか『美味しそやね〜』などと言いながら、子供は目を輝かせる。自分の順番が来るまでのそんな時間は、それはそれで楽しいものだ。
しかしこの例に限らず『おじさん』あるいは『おばさん』を冠につけた商品はこの世に割と出回っていて、かなり流行っているように感じる。ざっと例を挙げてみると、シチューはクレアおばさんだし、チョコチップクッキーにはマギーおばさんがいる。髪がパスタみたいになってる、出自が謎に包まれたデュラムおばさんのカルボナーラ、『りくろーおじさん』とは競合してしまうアニーおばさんのチーズケーキ、『おじさん』ではないがビアードパパのシュークリームってヤツもある。スイーツ・お菓子ではないが、変わったところではポッポおじさんの塩からあげってのもあるらしい。人の名を商品名に付けると、あたかも名前の人物がその商品を作ったみたいに感じる心理を、メーカー側の戦略として利用した訳だ。
◯◯おじさん、◯◯おばさん。決して◯◯オジサンや◯◯オバサンと、カタカナにはならない。何か秘密があるのだろうか。しかしそもそもなんでおじさんやおばさんなんだろう? 美味そうに思えるからか? にいさんやねえさんではイメージ的にダメなのかな?
提案だが、もう一つの字である『姐』を使って『小春姐さんの明太子』や、少々任侠っぽい香りはするが『市蔵兄ぃの西京漬』、昔の東映映画の世界観を生かした『玄界灘のオジキの塩』あたりがあると絶対買うんだがなぁ。どこかのメーカーで商品化してくれないだろうか。