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求人用パンフレット

 世の中には実に様々な仕事があるが、極一部を除き、あらゆる職種で人材難であることは間違いない。もちろんそれは我らが美容業界でも同じだ。人が足りないから美容室は求人誌に広告を載せ、他の媒体にもアラン限りの「求ム!」を連発する。黙って応募してきてくれる人を待っていたのではらちが開かないから、給料アップだけではなく、他の労働条件の改善にも手をつける。各企業の競争の末、ここ10年の新卒美容師における待遇の変わりようには目を見張るものがある。 そんな中、いつの頃からか美容室はリクルート戦略でパンフレットを制作しだした。大きなところには確かに以前からあったにはあったが、今やそこそこ小さな個人店であってもパンフレットというものを作る。わずかな可能性であっても対象となる若者に興味を持ってほしいからだ。だから私の学校にも毎日のように何冊も求人用パンフレットが届くのだが、今日はそんな美容室のパンフレットについて考察を加えたい。

 美容室のパンフレットは、大きさや形状などは千差万別であることには違いないが、内容はいずれも以下の項目について構成されていて、どれも大差ない。
 
1.表紙はモデルの写真(センスの良さをアピール)
➡︎そのサロンの作品であることも多い。外人を多用し、お洒落(?)なイメージを狙う。しかし外人は必要だろうか? 今や外人をモデルで使っても学生に特別感は感じさせられないと断言できる。バッサリいくが、余程有名な人を起用するなら話は別だが、経費の無駄である。

2.スタッフの写真(仲の良さをアピール)
➡︎新人がそのサロンで実際に勤務することを思い浮かべるツールとして重要なのがスタッフの写真であるが、残念ながら的外れなものも多い。今の若者は気が弱いから「楽しい仲間」の中に飛び込んではいくには高いハードルがある。特にヤンチャそうな集団を見て「いいなぁ、ここ」と思うわけはないのだ。中でも清潔感のない男性スタッフの写真はマイナスにしかならない。ワイルドさがカッコ良いとは思わない方がいい。

3.労働環境の良さ(手当、休暇、有休など)
➡︎ママさんスタイリストが頑張ってます、という記事を最近パンフレットで見かけることが多くなった。しかし確かに対象となる人にとっては加点要素なのかもしれないが、新人がそれを見てもさほどのプラスにはならない。一瞬へぇ、と思うだけだ。きっとそれより前年度1年間のスタッフ平均有休消化率の方が、アピールポイントとしては100倍影響があるだろう。

4.レッスン体制(◯年でスタイリスト、など)
➡︎スタイリスト(お客様に責任担当者として技術ができる、要するにその店舗での一人前)になるまでの期間は、その人の飲み込みの早さ、また店舗の方針により全く違う。短ければ1年、長ければ4〜5年。傾向としては美容料金を高く設定している店ほど長い。面白いのはだからといって上手いとは限らないことだけど(笑)   ところで若者は一人前になるまでの早さは、強くは求めていない。しかし長らく下回りの仕事もしたくないのである。難しいところだが、表し方はいくらでも工夫できるのに下手クソな紙面を作るんだよなぁ。

5.サロンワーク以外の活動(撮影など)
➡︎コンテストでの受賞が常連だとか、◯◯コレクションに毎回出てるとか。そんなことはやってる本人たちのマスターベーションでしかないといえば言い過ぎか? そこに大いなる価値を感じているサロンは会社をあげて取り組んだりするけど、それをアピールして新人が本当に飛びつくと思っているんだろうかと思ってしまう。大部分の若者はそんなことは求めていないんだなぁ。

6.余暇活動(レクリエーション、旅行など)
➡︎最近の若い人にとっては、社長以下仕事仲間皆んなで行く飲み会は、たとえ経費で自己負担は無かったとしてもご褒美にはならない。だからそのメンバーで行く旅行についても、喜ぶ人もいるだろうが、逆に苦行となる人も少なくないのが現実である。あまり大々的に紹介するものでもない。勘違いしたらいけないのは、自分たちはいくら毎日が楽しく仲が良かったとしても、その集団を初めて見た全く知らない若者にとっては「虎の穴」のようなものだということだ。

 大体こんな感じでどれも書いてあることは似たようなものなんだけど、一つ絶対タブーなことがある。それはオーナーが前面に出ることだ。きっとその人は苦労をして今の店を築いたんだろう。しかもスタッフたちにも優しく、生き方の見本みたいに慕われてもいる・・・でもダメだ。中年〜還暦前後の美容室の社長は、やっぱり表に出したらいけない。ましてや過去の華々しい実績なんかを自慢しても、求人の力という意味では屁の突っ張りにもならない。どうしても自慢したいなら、己の店のパンフにではなく、若者にとっては「オジサンの自慢ツール」みたいな位置付けになっているFacebookにでも紹介したら良い。

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