仏談 ー 地獄 2ー
さあ、8階建構造になっている地獄の各フロアを語ってみようか。仏教というのは宗派によって、坊さんによって、時代によって、お経によって、説かれる内容が違う。だから地獄についても描かれ方がそれはそれは多種多様だ。そんな違いをいちいち断れないので、私は私の好みと解釈で突っ走ってみる。
🔳最上層=1層目《等活(とうかつ)地獄》
殺生の罪を犯した者が落ちる所。ただし罪が殺生だけだった場合だが。生前いたずらに生き物を殺すような冷酷な人が死ねば、7回の裁判四十九日の後はここに堕ちる。蚊やゴキブリを殺しただけでも懺悔しなければ必ずこの地獄に落ちるのだ。まして動物や人殺しなんかは間違いなく行き先はここだ。
地上世界から見ると地下1千由旬(1万km)に存在する等活地獄。その大きさは縦横高さがそれぞれ1万由旬(10万km)の立方体だ。この中にいる罪人たちは鉄の爪で殺し合いながら地獄に住まう鬼に身体を切りきざまれてこと切れるのだが、風が吹いたら元の身体に戻り、責め苦が繰り返される。この「復活して何度でも責め苦が繰り返される」現象は、8大地獄全てに共通である。
この地獄における刑期は500年である。ただし、ここでの1年は通常の1年ではなく、人間界の50年を1日とする四天王の寿命である500年という年月がここ等活地獄の1日である。それがさらに500年にわたって続くので、人間界の時間に換算すると・・・、
50年×365日×500年×365日×500年
となり、
1,665,312,500,000年
(1兆6653億1250万年)
にわたって苦しみを受けることになるのである。
🔳2層目《黒縄(こくじょう)地獄》
殺生に加え、盗みも働いた奴らはここだ。等活地獄の下に位置し、縦横の広さは等活地獄と同じである(以下、大焦熱地獄まで広さは共通)。鬼は罪人を捕らえて熱く焼いた縄で身体を打ち縄目をつけ、その縄目に沿って熱鉄の斧で切り裂いたり、熱した鉄を背負わせて鉄の釜に突き落とされて煮られる。この苦しみは先の等活地獄の苦しみの10倍である。
黒縄地獄における刑期は1000年である。等活地獄とは計算方法が違い、詳細は省略するが人間界の時間では13兆3225億年にあたる。こうなるともはや日数の長さはなんのこっちゃわからない。
🔳3層目《衆合(しゅうごう)地獄》
殺生、盗みの2つに加えて淫らな行いを繰り返した者が落ちる。黒縄地獄の下に位置し、その10倍の苦を受ける。鉄の山が両方から崩れ落ち、おしつぶされて圧殺されるなどの追い込まれた苦を受ける。剣の葉を持つ木の昇り降りをさせられ、そのたびに罪人の体から血が吹き出す。また鉄の巨象に踏まれて押し潰される。
ここでの刑期は2000年。先と同じく計算方法は省略し、人間界の時間に換算すると106兆5800億年に当たる。
🔳4層目《叫喚(きょうかん)地獄》
殺生、盗み、邪淫に加え、飲酒をした者が対象。飲酒といっても単に酒を飲んだ者ではなく、酒に毒を入れて人殺しをしたり、悪さを企んだ者のことだ。衆合地獄の下に位置し、その10倍の苦を受ける。熱湯の大釜(大鍋)の中で煮られたり、暑い炎の鉄室に入れられる。風のように速く走れる巨大な鬼たちが罪人を追い回して弓矢で射る。罪人たちの体内からはうじ虫がわき出てきて亡者たちのからだを食べつくす。
刑期は4000年、人間界の時間では852兆6400億年だ。
🔳5層目《大叫喚(だいきょうかん)地獄》
殺生、盗み、邪淫、飲酒、に加え妄語(ウソ)をした者。叫喚地獄の下に位置し、その10倍の苦を受ける。叫喚地獄で使われる鍋や釜より大きな物が使われ、更に大きな苦を受け泣き叫ぶ。
刑期は8000年、人間界の時間では6821兆1200億年にあたる。
🔳6層目《焦熱(しょうねつ)地獄》
殺生、盗み、邪淫、飲酒、妄語に加え、邪見(仏教の教えとは相容れない考えを説いたり実践する)した者の行き場所。大叫喚地獄の下に位置し、その10倍の苦を受ける。極熱の火で何度も焼かれ焦がされ、苦しみが途切れない。罪人たちは鬼たちに打たれ続け、赤く熱した鉄板の上で鉄串に突き刺されたり、目・鼻・口・手足などを分解され、それぞれを炎で焼かれる。この焦熱地獄の炎に比べると、それまでの地獄の炎も雪のように冷たく感じられるほどだという。
刑期は16000年、人間界の時間では5京4568兆9600億年にあたる(初めて『京』という単位が出た!)。
🔳7層《大焦熱(だいしょうねつ)地獄》
殺生、盗み、邪淫、飲酒、妄語、邪見に加え、犯持戒人(尼僧・童女などへの強姦)を働いた者。焦熱地獄の下に位置し、前の6つの地獄の一切の諸苦に10倍して重く受ける。また更なる極熱で焼かれて焦げる。罪人の苦しみの声は地獄から3000由旬離れた場所でも聞こえる。
この地獄における刑期は3万2000年、人間界の時間では43京6551兆6800億年に当たる。
🔳8層《無間(むけん)地獄》
さあ、最下層だ!なんでもそうだが最下層は凄いぞ。ここは殺生、盗み、邪淫、飲酒、妄語、邪見、犯持戒人に加えて親や聖者を殺害した者。地獄の最下層であるこの世界の大きさは先に述べた7つの地獄よりも大きく、縦横高さの一辺それぞれが2万由旬(20万km)だ。最下層のこの地獄に到達するには、我々の住む地上世界から自由落下で落ち続けて2千年かかってたどり着いた後、そこから責め苦が始まるのだ。
この無間地獄では四方から絶え間なく炎が放射されてくるので、ギブアップなしで全身を焼かれ苦しみ続けることになる。口を熱鉄の金具で開かれ、抜き出された舌はじゅうたんのように広げられ、100本の鉄釘で打ちつけられるのだ。また口の中に熱く灼けた鉄の砲丸を入れられ、その上溶けた銅を注ぎ込まれる。ここで受ける苦しみは、あえて比較するとこれまでの7つの地獄でさえ夢のような幸福に感じるほどであるという。
この地獄における刑期は6万4000年であり、人間界の時間では349京2413兆4400億年にあたる。
さて、一気に語ってみた地獄世界である。文献には基づいてはいるが、あくまで私個人のフィルターを通していることをお断りしておく(創作はない)。
しかしやっぱりホントにあったらイヤだなぁ。ほぼ永遠に『終わらない』っていうのがもはや耐えられない。安西先生は『あきらめたらそこで試合終了だよ』と言ったけど、あきらめても終わらないんだもんなぁ。
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