貝のお話 1
私は海の生まれです。もちろん『ヴィーナスの誕生』のような出自ではありません(笑) 子供の頃から海と共に生きてきたという意味です。父が近海モノの漁師だったこともありますが(私の町は遠洋漁業や捕鯨の基地でもありました)、魚のことは一般の人よりきっと詳しいです。でも今回は魚とは別に、これまた大好きな貝についてのお話をしてみます。経験したことや実際見たことを語るだけの一方通行なので、情報はかなり偏っているということをお断りしながら。
郷里である上五島に住んだ子供の頃から、魚と同じく貝には慣れ親しんでいます。何度かアタッた(お腹をコワした)こともあり、一晩中続く七転八倒の苦しみも知っています。だから貝の中でも食べられない種類があって、例えば世界中の人々が愛するカキも、残念ながら私はダメです。それでもカキを食せる人に復活することを目指し、アタる体質となってしまった後も3度チャレンジしたのですが、全てそれまでと同じくやはりアタッてしまったのでした。おかげで今では もはや一生カキとは友達になれそうもないと、悲しい覚悟をしています。
これまで食べた貝の中で『あれは美味かったなぁ』としみじみ思うのは、五島の海で素潜りや磯で獲った多種多様なヤツら(※)です。令和の今、ネットで調べても『食用』とは記載されていないものも少なくありませんが、五島においては『わからないものも一旦は食してみるべし』という法則(笑)があります。全ての獲物を とにかく放り込んで塩茹でした大鍋を囲み、みんなで貝やカニ(ショウジンガニ。私はコイツの味は絶品中の絶品だと思っています)を食べた日々は 私の中では今でも光輝くような珠玉の思い出です。
※ 本稿に登場していないものでは、ミナ(ニナ)貝、シッタカ、オオヘビガイ、ヒザラガイ、亀の手 など
昔々 子供の私は、貝殻はどうやって大きくなるのか? と考えても答えが出ず、色んな人に聞き回ったことがあります。貝の体(身)が成長して大きくなることについては、食べて栄養をとって成長するからってことで納得できるのですが、貝殻の方は? と考えると、他の人もよく知らないんじゃないかな? と思います。私に尋ねられた大人は皆、ちゃんとした正答を持っていませんでした。
ヤドカリみたいに 自分の体が大きくなるにつれて少しずつ大きな貝殻を見つけて引っ越すわけではないので、当然体の成長に合わせ殼も大きくしていく必要があるわけです。そう、彼らは自らを成長させながら、我が身が収まる殻の方も、自分が出した分泌物と水中から取り入れたカルシウムを合成,硬化させ、少しずつ殻を増築していくのです。図鑑には書いてないしネットもない時代、二枚貝は波紋を増やしていくように貝殻を段々大きく、巻貝は巻きを段々延長していくのだという事実に、子供の私が辿り着くまでにはそれはそれは遠い道のりがありました(笑)
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