昭和歌謡は怖い 1
《恋の奴隷》 奥村チヨ
昭和44年6月1日発売 東芝レコード
〽️あなたと逢ったその日から
恋の奴隷になりました
あなたの膝にからみつく
小犬のように ※1
だからいつもそばにおいてね
邪魔しないから
悪い時はどうぞぶってね ※2
あなた好みのあなた好みの
女になりたい
あなたを知ったその日から
恋の奴隷になりました
右と言われりゃ右むいて
とても幸せ ※3
影のようについてゆくわ
気にしないでね ※4
好きな時に思い出してね
あなた好みのあなた好みの
女になりたい
あなただけに言われたいの
可愛い奴と
好きなように私をかえて ※5
あなた好みのあなた好みの
女になりたい
奥村チヨさんは『和製シルヴィ・ヴァルタン』と呼ばれた(という話をしようとすると、そのシルヴィ・バルタンを説明しなきゃならなくなるんだけど、本題ではないので『当時流行したフレンチポップを歌う フランスのカワイ子ちゃん歌手』というだけにとどめます)。また黛ジュンさん、小川知子さんとともに『東芝三人娘』の一人であり大人気を博した。
音楽配信サービスに登録して、いわゆるサブスクで好きな曲を毎日気ままに聴いているが、頼みもしないのに『こんなヤツが好きなんちゃいまっか?』みたいな提案が勝手に向こうからやって来るのだが、その中にはずいぶん昔の歌もあって、ついこないだ 何十年ぶりに聴くことになったのが冒頭の『恋の奴隷』だ。
改めて歌詞を見て愕然とした私(笑) ・・・こ、これは、間違いなくモラハラ彼氏に依存するオカン女の図ではないか(笑)? 歌詞に ※ マークを付けた箇所に私なりの注釈をつけてみたい。
・・・でも改めて聴くといい歌なんだよなぁ。
※1 子犬のように・・・
あなたの犬になるのである。子分や弟子などの人としての最低限の尊厳も無い、自分の欲や望みさえ捨てた存在になるのである。まぁだからこその『奴隷』なのだが・・・。
※2 悪い時はどうぞぶってね・・・
男性が女性を殴ったり叩いたりする図。それができる男は間違いなく頭がおかしい。それを喜ぶ女も問題を抱えている。男に殴られて喜ぶことはマゾヒズムであり被虐性愛だ。変態でしかない。同時に救いがない。
※3 右と言われりゃ右むいてとても幸せ・・・
まるで傀儡(くぐつ)のような無思考状態。靴を舐めて喜び、殴られて喜び、自分の意志というものを捨て切った存在は、ご主人様と同じ空間にいる時以外は 生命を維持することと、ご主人様に気に入られるための準備しかしていない
※4 影のように・・・気にしないで・・・
自分の存在というものをどう考えているのだろう。誰かに影のように付きまとわれたら、気にしないでと言われても、イヤでも気になるでしょうね(笑) しかしこれはもはや『3歩下がって影を踏まず』どころの話ではなく、病の領域に入っているのではなかろうか。
※5 好きなように私を変えて
これはもう調教である(笑) あ、いや失礼。
輿入れ先の家の色に染まることが求められた昔の花嫁。『あなたの色に染まります』よろしく、自分は何色にもなれるように上から下まで真っ白だ。万が一にも 族に襲われたり操を汚されたりといった非常事態には、誇りを守るために自害用の懐剣を差す花嫁と同じ心境なんだろうか。
女性を誰かの虜にしてしまう惚れホルモンであるPEA(フェニルエチルアミン)が脳内でドバドバ放出されることで、一途な『恋の奴隷』状態になるんだろうけど、その恋愛ホルモンが大量に分泌されるのは恋愛の始めの時期だけなんだけどなぁ・・・。
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