“ユーミン” 50th
ユーミンがこの7月でデビュー50周年だという。なんと!半世紀だ。生まれた子供が50歳だぜ。そう、かくいう私ももはや還暦なのだから確かに半世紀経った。経ってしまった。こういう言い方はナンだが彼女はバケモノなのだろうか。私は別に熱狂的なユーミンフリークでもなく並のファンの域は出ないのだが、少なくとも70年代から今まで、日本に住んでいる人なら、誰であろうとも彼女の影響を受けずには生活できなかったのではないだろうか?と思ってしまうところがスゴい。今回はあえて彼女の初期(デビュー~5年)の楽曲の中から私自身『これは!』という数曲を勝手にピックアップして語ってみたい。
『海を見ていた午後』 アルバム “ MISSLIM ” より
歌詞に出てくる、山手の『ドルフィン』というレストランには行ったことはないけど、五島列島の海の風景が体と心に沁みついている私としては歌詞に出てくる世界が目に浮かぶ。ユーミンが歌うと、どんな人が、どんなテーブルと椅子に座って、どんな風が吹いて、どんな◯◯◯で・・・っていう光景が頭の中に出てくるんだなぁ。シーンが頭の中に出てくるのもユーミンの不思議でスゴいところなのかもしれない。
『ルージュの伝言』 アルバム “ COBALT HOUR ” より
軽快なリズムやコーラスに乗せてブンチャカ楽し気に歌ってはいるものの、内容は旦那の浮気に怒った妻が、その旦那の母親に窮状を訴えにいくというもの(だと思う)。よって内容としては決して軽快なわけではなく、下手をするとこの後修羅場が待っている。風呂場の鏡に『浮気な恋を早くあきらめない限りうちには帰らない』と口紅で書き残して列車に乗った奥さん。しかしイチイチ洗練されたユーミンの世界観に包まれた歌だ。なんせ町がドンドンではなく、Ding-dong(ディンドン)遠くなるんだもん。そらおシャレだわ(笑)
『さみしさのゆくえ』 アルバム “ 14番目の月 ” より
私はこの曲をかくれた名曲だと思っている。しかしこれ程切ない歌があろうか。学生時代は少々強がっていたものの、本当はシャイだった『私』。好きだった人は就職のため遠く海外に。日本を離れる前に言ってくれた『お前がいい』という言葉をずっと大切にしていた『私』。でも久しぶりに一時帰国したその人の心の中には『私』はもうなかった。期待していたことは何も起こらず再び帰途につく彼。空港でその人が乗る飛行機を見送る・・・。
ところでユーミンはよくモノマネの対象になる。それだけ知れ渡ったってことなんだろうけど、私に言わせればみんなヘタだ。その中にあって清水ミチコさんだけは上手だなぁと思うけど、その他のモノマネの人は、ただ鼻にかかったノンビブラートでユーミンの代表曲をなぞろうとしているだけだ。失礼だしユーミンを軽々しく扱っているようで腹立たしい。
しばしば彼女と比較の対象にされるのが、桑田佳祐さん(デビュー'78)、中島みゆきさん(同'75年)だが、ユーミンを含めたこの3人それぞれが巨大なファン層を維持したのは、つぶし合いがなかったからだと思う。この『ビッグ3』(と勝手に呼ぶが)は音楽性が根本から違うからファン層が分かれていてすみ分けができている。ともに今に至るまで日本のポップス界を牽引してきた巨星には違いないが、70年代という時代は、他にもいるいる、今でも元気なデッカいのが。ちょっと並べてみよう。
⚫︎オフコース 1970年デビュー
⚫︎チューリップ 1971年デビュー
⚫︎アリス 1972年デビュー
⚫︎さだまさし 1973年デビュー
⚫︎アルフィー 1974年デビュー
まさにキラ星です!すごいぞ70年代前半! 他にもたくさんいるんだけど、あくまで私基準でピックアップしたビッグアーティストをまとめてみた。活動休止やら解散やら再結成やらはあったりするんだけどね。
最後に。ユーミンの曲の最もすごいところを一言で表すなら、『古くならない』ということではないだろうか(彼女自身古くならないが防腐剤でも入っているのだろうか)。ジブリ映画にも何曲かが効果的に取り入れられているが、曲を作った人、またその曲を使おうとする人、双方ともに感性が素晴らしいと思う。デビューアルバムである名盤『ひこうき雲』を例にとると、発表から50年経過したはずなのに、いまだに瑞々しいのはどういう訳だろう。もちろんティン・パン・アレーという音楽センスの塊、かつ超絶技巧集団がバックを固めたということもあっただろうが(メンバーの松任谷正隆氏はその後ユーミンと結婚された)、アルバムの表題曲である『ひこうき雲』はユーミンが高校生の時に作られたというではないか! これを天才と言わずして何をもって天才と呼ぶのか!と思ってしまう。歌詞の中に歌われている主人公『あの子』は亡くなってしまったらしいのだけれど、死因は病気だったのか事故だったのか、はたまた戦争のせいで命を落としたのか・・・。ネットを探ると色々取りざたされてはいるが、ユーミン本人が発信している訳ではないので真相はわからない。このアルバムには私個人としても特別な思い入れがあり、小・中学校時代を思い出して今でもゾーンに入った時には涙が出てしまう。
とにもかくにも50年はホントにスゴいなぁと思った今回。でも改めてここに登場してもらったアーティストの皆さんについても、違う機会で語ってみたいなぁと思った次第。