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達人手当

 久しぶりに丸亀製麺でうどんを食べた。時間は日曜の12時半。混んでいた。大阪でいうところのババ混みだ。中でも店内に入ってすぐの コーナーは人口密度が高く、注文をする厨房外周の私たちは 手に手に盆を持ってひしめき合っていたが、その注文を受ける内側に、ベテランと思しきその女性スタッフは君臨していた。

 注文を受けると直ちに丼を温め、もう片方の手はうどんを茹でにかかる。湯切りのマシンにそのうどん玉を乗せ、先ほどの丼に素早くあけると同時に次の注文である冷やしうどんを冷水にさらす。数秒でも時間が空けば次のウドン玉を丸め、玉子を割り、トッピングを乗せる。しかもその一連の作業は近くにいる若いアルバイトに指示を出し、奥のイナリ寿司や揚げ物の担当ともタイミングをはかったりしながらの 超絶マルチプレイヤーぶりである。

 目まぐるしく変わる状況に迅速かつ正確に対応しているその姿は見事としか言いようがないのだが、その女性スタッフはしかめっ面ではなくニコニコしながら次々に舞い込む希望にこたえていく。その姿はさながら敵と対峙した際 どうすれば最も効率良く 防御と攻撃について瞬時に判断し対処するイージス艦のようだった。
 八面六臂(8つの顔 6本の手)という成語があるが、正にその女性スタッフをそのまま表しているような言葉だ。奈良興福寺の阿修羅像(テーマ画像参照)が6本全ての手を使い、笑顔で動き回っている状態と表現したらわかりやすいだろうか? ただしあの少年の姿に造像された阿修羅天は三面六臂だが。

 私は常々思っているのだが 我が日本という国は、バイトにせよ正社員にせよ はたまた研究職にせよ、優れた人材というものを正当に金額で評価しない風土があるように思う。変な横並びの平等主義がはびこっていて、ハイパーでウルトラな人材と どうにも使えないポンコツが同じ給料や昇給率だったりするのだ。企業側も 優れたポテンシャルやスキルを持つ人材を流失させたくないのなら 社員・従業員の能力を個人別に捉え、思い切った待遇でつなぎ留めるような考え方をしたらいいのに、と強く思う。ノーベル賞を貰うレベルの科学者がこぞって外国に行ってしまうのは、このあたりの事情なんじゃないのかなぁ? 知らんけど。

 余談ながら、以下の話をすると 大体男は同意してくれるのだが、接客業における社員の見た目(イケメン度や美人度)は集客やリピート率に大きく影響するのは間違いないことを前提に、明らかに売上に貢献していることが 社長や評価の責任者が認めるならば、私は『イケメン手当』や『ベッピン手当』を対象の人に支給したら良いと思っている。しかしこの考えは 女性からは大概賛同を得られない。理由は その人の努力による差じゃないから とか、人の好みは様々だから(その人のことを)全員がイケメンやベッピンと思わないかもしれないから、といったものだ。業務におけるスキル以外の部分では あくまで横並びに『同じ』でなければならない ということだろうか。しかし企業への貢献という部分に視点を絞るなら、能力以上の貢献度があるのが見た目である。いや、それも一種の能力なのかもしれない。

 ちなみに『ベッピン手当』ならぬ、超絶な現場力を持つ 本稿冒頭の女性みたいな人の能力に手当を付与するなら、その名目は『達人手当』(横文字にするなら『ハイパースキル手当』)でいかがだろうか。

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