あなたは料理ができますか?

料理ができるって、どういうことだろう。
どこまでできれば、料理ができると自称して良いのだろうか。
私は「家で料理するの?」と聞かれると、いつも自信が持てずにゴニョゴニョしてしまう。

夫と結婚する前、夫からは料理ができると聞いていた。
しかし、いざ頼んでみると、どうも私のイメージしていたものと違う。

まず、調理方法のレパートリーが少ない。肉類は「焼く」一択。あとは味噌汁とか豚汁とかを作る。サラダの類はあまり作らない。野菜を切って市販のドレッシングをかける程度ならできるかもしれない。
でも、例えばキャベツと塩昆布を和えるとか、ゆで卵を潰してツナとマヨネーズを混ぜるとかの発想がない。
(夫の名誉のために追記すると、今はだいぶ頑張ってくれている。)

偉そうに言ったが、私は私で、名前のついた料理をあまり作れない。
例えば、ハンバーグとか、餃子とか、肉じゃがとか。 
目的の料理のためだけに食材を買うのが苦手。肉じゃがのために糸こんにゃくを買うなら、同じ値段の豆腐を買った方が汎用性が高いと思ってしまう。
餃子の皮なんて、余ったら余ったで使い道があることはクックパッドを見て知っているけど、それを使い切らなければというプレッシャーが嫌だ。

結果、毎回、「余り野菜と肉の炒め物」と「何らかのサラダ」を作ってしまう。

夫も私も、食べられるものを食卓に出すことはできる。これは果たして料理ができると言って良いのか。

ところで、家事としての料理って、美味しく作るだけでは不十分で、色々なスキルが求められる。単純に料理ができることと、料理を家事としてこなせることには、大きな隔たりがある。

例えば、こんなスキルが必要だと思う。

  • 栄養バランスと食材の消費期限と調理時間を加味して、適切な献立を組み立てられる。

  • 予定した時間通りに完成させることができる。

  • 調理器具を適切に扱える。定期的に調理器具のメンテナンスができる。

  • キッチンを汚さずに使える。汚したとしてもその日のうちに綺麗にできる。

  • 材料費を予算内におさめることができる。

  • 毎日継続して料理ができる。

味とか見た目ではなく、効率的かどうかと、持続可能性があるかどうかがポイントだ。
持続可能性を担保するために、時には冷凍食品やお惣菜を取り入れることもあるが、その際も、栄養バランスと予算を考慮に入れなければならない。

また、課せられる課題も、複雑で総合的であることが多い。「美味しい料理を作れ」みたいな、単純な課題であることは稀だ。

例えば、

  • あと20分で冷蔵庫の余り物を使って3品作れ。なお、子どもをお風呂にいれる体力も残しておくこと。

  • 卵の消費期限が今日までだったことに、料理を始める直前に気が付いた。献立を再検討して夕食の時間に間に合わせろ。

  • 風邪をひいたので、体力の消耗を最小限に抑えながら消化の良い料理を作れ。

こんな感じ。
私は、こういうのはパズルみたいで内心楽しいと思っている。仕事終わりにバタバタとやらないといけない日は辛いけど。

とは言え、家事って家庭によってそれぞれで、中には「夫の会社の重役を呼んでホームパーティーをする。豪華でバラエティに富んだ料理を10品作れ」みたいな課題をこなす主婦もいるだろう。

また、家族構成が多ければ、それだけ献立も複雑になって、時間も要するし考えることも増える。
メタボで高血圧のお父さん、総入れ歯のおじいちゃん、部活で毎日汗を流している高校生、離乳食期の赤ちゃん……。
全員が同じ料理を食べるわけにはいかない。

つまり、家事としての料理というのは、家庭ごとの生活様式や環境によって求められる能力が異なる。
「料理」という言葉は意味が広すぎる。

こう考えると、やはり、「料理ができます」とは自称しにくい。
「毎日食卓に食べ物を並べることができます」としか言えない。

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