子育てはうまくいかなくて良い
Youtubeで出産や育児についての動画を漁ったことがある人なら、「助産師HISAKOの子育てチャンネル」を一度は目にしたことがあると思う。
HISAKOさんの「頑張らんでええ」「適当でええ」という関西弁の合言葉が、大阪在住の私の心にスッと入ってきて、出産前からHISAKOさんの動画をよく見ていた。
私が一番刺さったのは、HISAKOさんの、「子育てがうまくいかないと感じるということは、子どもを尊重できている」という言葉。
「子育てはうまくいかなくて当たり前」という言葉はよく聞くけど、その理由を、HISAKOさん以上にうまく説明してくれる人はいない。
曰く、「逆に子育てがうまくいったら怖い。うまくいってると感じるということは、子どもの行動をコントロールしている」
これは目から鱗だ。
HISAKOさんの言葉を聞くまで、私は、「うまくいかなくて当たり前だとしても、うまくやりたいと思うのが人間ってもんでしょ!」と思っていた。
うまくいかないことに対して諦めるのは、自分の性に合わない。
諦めるのが悪いことだとは思わないけど、積極的に諦める必要はないと思うし、うまくいく方が良いに決まっていると思っていた。
子どもを産んで分かった。
子育てのうまくいかなさって、大人の都合と子どものペースのバランスをどうやって取るか、その難しさだと思う。
要するに、「ここで私の思い通りにすれば私は満足だけど、子どものことを思うとそうはいかんよな!!! どうすっかなもぉ〜〜〜〜!!!」ってこと。
常に、こういう葛藤の中に身を置いている。
大人の都合ばかりで動いて子どもを顧みないのはダメだし、だからと言って、すべて子どものペースに合わせていると生活が破綻してしまうし、結果として子どもの為にならない。
例えば、ミルクをあげないと体重が増えないのに、ミルクを飲みたがらない。
無理に飲ませると吐き戻す。
自分のペースで飲ませてあげたいけど、あまりに体重が増えないと発育不良の心配がある。
例えば、寝てほしいのに、夜になると泣き喚く。
夜泣きにいつまでも付き合っていると、体力が奪われて日中のお世話が満足にできない。
泣きたいだけ泣かせておこうにも、近所迷惑の心配もある。
どうしろと言うんだ。
いや、マジで。
どうしろと言うんだ!!!
上に挙げたのは一例で、ネットの海には、こういったたくさんの苦難に対する解決策がいくつも掲載されている。
それらを片っ端から試しては挫折するという、トライアンドエラーの日々だ。
子どもの意思を100%無視すれば、大人のストレスはゼロだ。
スムーズに事が進むと、自己満足できる。
「私って、子育て、うまくできているわ」と、悦に浸ることもできるかもしれない。
自分の欲望だけを言うと、当然、「思い通りにできているママ」になりたい。
その方が楽だし、一見すると格好良く見えるし、理想通りだ。
でも、それは「自分のための子育て」でしかない。
そんなことをしていると、いつか大きな代償を払うことになりはしないか。
逆に考えてみる。
思い通りにいかなくて頭を悩ませる姿こそが、ちゃんとした親の姿ではないか。
子どもの頃、親にどうあって欲しかったか。自分を尊重して欲しかった。
大人になってから思う。甘やかさずに、言うべきことを言ってくれたことには、感謝している。
大人の視点、子どもの視点、どちらも必要なのだと思う。
子どものことを尊重しつつ、大人の都合とのバランスをどう取ろうかと悩む。
だから、うまくできていないと感じる。
それはつまり、「ちゃんと子育てができている」ってことだ。
その選択の結果は、子どもの安全が脅かされない限り、あまり重要ではないのだと思う。