【小説】 さよなら、ローファー
靴箱をのぞいたら、奥の暗がりにローファーを見つけた。
思わず手にとって、玄関にそっと並べてみる。
ころんと丸いつま先。
高めに作られたヒール。
そうだ、あのときわたし、かわいい形のローファーを探したんだよね、と思う。
ほんの1ミリでも背が高くなれば、あのひとの視界に入れるかな。
そんなふうに思ったりして。
少しヒールが高いものを選んだ。
今思うと、ばかみたいで笑っちゃうけど。
それでもわたし、お店でこの靴を見つけたとき、すごく嬉しかった。
毎朝、玄関でこの靴がわたし