
「自分の可能性はいつでも他者にこじ開けられる」
福岡ソフトバンクホークスの工藤公康監督が退任した。
まだ解説者だった2013年、札幌で開催された日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会(JOSKAS)のゲストで講演されたときの言葉に感銘を受けた。それ以来自分が苦境に立たされたとき、その言葉を思い出すようにしている。
『自分の可能性はいつでも他者にこじ開けられる』
実は今回の会見でも同じようなことをおっしゃっていたが、こちらは後に書くことにする。
以下は講演でのお話。
まだ若手の頃「何でこんなに苦しんでるのにまだまだやらせるんだ。早く終わってくれ」というほど、コーチに厳しく大量の練習を課せられていて、そうは言っても途中で放棄するわけにはいかないから全てのメニューをやりきっていたそうだ。
「しばらくするとその意味がわかった」
出来なかったことが出来るようになる。
出来るようになると、新たな視点を持てるし、新たな課題を見つけることができる。
何より、結果がついてくる。
自分では「こんなの無理だよ」と思うことも、他者に無理やり課される、強いられることで案外やれてしまえる自分に気づく。
自分の可能性の限界を決めつけていたのは自分で、周囲の人は限界のその先が見えている。
***
当時の私は31歳で大学を卒業し、管理栄養士の国家試験に落ちて、勤めていた専門学校も人手不足で辞められないでいて、しかもフルで働けると言っているのに契約形態を変更してもらえず、後になって「フルでいけるなら言ってよ」と言われる始末。
自分の人生なのに自分を生きれていないような感覚だったように記憶している。
そこで聞いた工藤さんの話。
フルで働けない分、空いている時間を食べ放題のキッチンバイトに充てた。
尊敬している先輩栄養士さんが「めしを作れる栄養士のほうがいい」と言っていたから、寮や合宿で大量調理をする自分をイメージしながらバイトに勤しんだ。
そのイメージは現実になった。
トレーナーの駆け出しだった頃に、指導係りをしてくれた先輩トレーナーがいた。
めちゃくちゃ厳しくて、寝る時間も取れないし、何をやっても否定されるし、身も心もボロボロになって、自分から「無理です」と離れたことがある。
けれど、一切恨んでいないし、何なら感謝しているほど。
それは、自分の限界を知れたことにある。
「ここまでやっても大丈夫」
そのギリギリのラインを知っておくことは、自分を守るためでもあるし、これを超えれば新たな何かを掴めるのではないかとワクワクを生む機会にもなる。
この限界を超えるには、一人では危険だ。
だから他者の存在が必要になる。
『自分の可能性はいつでも他者にこじ開けられる』
これからも、苦しいときはもちろん、何か新しいことにチャレンジするときは、仲間や先輩や恩師や友人、家族、教え子、選手たちに力を貸してもらいながら、可能性のその先に進んでいこうと思う。
私の生きる指標をくれた工藤さん、いや、工藤監督。7年間も私の地元福岡の誇るべき球団ホークスを率いてくれてありがとうございました。
そして、本当にお疲れさまでした。
17分あたりで「強いホークスを維持するために意識したこと」についてお話ししている内容と今回書いたものが同じ(表現は違いますが)です。
ぜひ、そこだけでもいいから聞いてほしい。
ご本人から出てくる言葉の重みを感じてほしい。
強いホークスを維持するために意識したこと
1年でも長く現役でいてほしい、うまくいかないときも苦しいときも負けない強い心と体を作ってあげることさえできれば勝てるようになる。
数年先にあの苦しい練習を耐えてよかったと思えるような練習をすること。
若いときもそうだった。言葉で表しづらいけれどやらなければわからないこともある。
2021年10月27日 退任会見にて
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