幕張オフィスが大変だ
Mapletree Pan Asia Commercial Trust(MPACT)が保有する幕張の3件のオフィスビルが、評価替えで136億円も評価額が下がりました。きっかけはテナント退去などによるものですが、このサブマーケットで大量の空き床をどうやって埋めるのか、海外からも注目を集めています。
<物件たち>
mBAY POINT:NTT幕張ビルとして1993年に竣工。2016年に215億円で売却
富士通幕張ビル:1992年に竣工。今般、富士通が退去。
幕張ベイタワー:SII幕張ビルとして1993年5月に竣工。
<幕張に地区に関する個人的な認識>
幕張新都心はバブルのころに千葉県企業庁(現・千葉県企業庁)が主体となって開発された街です。サテライトオフィスとして大手企業がオフィスビルを建設・保有する他、幕張メッセがあります。メッセ周辺に宿泊施設が設けられ、タワー状のプリンスホテルもありましたが、これはアパホテルに看板が変わりました。80‐90年代は都心に土地がない、ということで企業が土地を買ってビルを建てたのでしょうが、2000年代以降、ビルの売却、企業の転出が続いています。東京駅からも結構時間がかかる中、ホワイトカラーを吸引するのは大変だったと思われます。
現在の幕張は、イオンの本社、渋谷幕張中高という東大合格で共学No1となった有名私立校、三井のアウトレットモール、巨大なイオンタウン幕張新都心、ZOZOマリンスタジアム、などのほうが吸引力があるかもしれません。
事業系のハードモードとは対照的に、パティオスという中低層で中庭を備えたマンション群は2000年代に入っても好調だったと記憶しています。大手デベロッパーをグループに分け、計画的に区画を配分し、売りに出るたびに人気を博していました。日本はデベロッパーの競争によって街並みという概念が希薄ですが、本件は企業庁が公有地を計画的に開発させることにより、成功したのだと推測します。
<シンガポールでの反響と個人的意見>
Mapletreeというシンガポールの国有企業が運営しているREITで、物件評価額が突然2割下がったことにより、シンガポール投資家が持っていたであろう「円安だけど市場は安定している」という日本物件への信頼を揺さぶっています。オフィスも他の用途も東京圏ではなくサブマーケットで語られるべきですが、個人的にはオフィスのサブマーケットとしての幕張は東京圏の中でも厳しいと言わざるを得ません。こんなテールリスクの大きい物件をなぜ買ってしまったのか、とも思いますが、Mapletreeは長期保有していますが、ガサが張る物件は外資のババ抜きの対象になりやすいのもまた事実です。
<MPACTが抱える他の問題>
MPACTはMapletree傘下の2つのREITが合併したREITです。説明不要と思いますが、中国の保有物件が厳しいです。それに加えて、郊外型ビジネスパークでMPACTの旗艦物件であるMapletree Business Centreも稼働率が低下しており、商業施設のVivo City(セントサ島の向かい、伊藤豊雄設計)の奮闘だけではカバーしきれない、という構図です。
<おわりに>
大変そうではありますが、幕張には何度も足を運んでいる身からすると、幕張オフィスビル群が引き続き社会のストックとして活用されることを願わずにはいられません。