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【舞台】情報が引き算されてより多くが見えた - Sea Wall/A Life

Broadwayのショーと言えば、セットや衣装も豪華、大人数が出演するミュージカルを想像する。少なくとも私はそうだ。
でも今回鑑賞したのは、セットも最低限かつ衣装もシンプルなモノローグ、いわゆる一人芝居。
視覚的情報が最低限だったからこそ、情報が引き算されてより多くを感じ、見ることができたと思う。

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数か月前からチケットを購入し、待ちに待ったその日、映画"プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂"で一目惚れをしたJake Gyllenhaal氏をとうとうこの目で見た。

最初こそは顔面と肉体がどタイプなところから入り、特に陰のある役("ナイトクローラー"や"ノクターナル・アニマルズ"など)が似合う彼の芝居、そして屈託のない笑顔がかわいすぎるインタビューなどを通して、完全なる私の「ハリウッド界の推しメン」と化した、そんな彼の芝居が目の前でナマモノとして見られる、至福の時間を過ごした。

顔面が大好きな話は置いておいて、舞台について語ってみたい。

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舞台は前半のTom Sturridgeによる"Sea Wall"、後半のJake Gyllenhaalによる"A Life"の二部構成。

語り手は、父親の死、子どもの誕生など正反対のように思えるライフイベントの中で、似たような感情を持ち合わせたり、過去の出来事を振り返ることで今新たな感情に気が付いたりする。

二部どちらも複数のタイムラインが入り混じっている脚本のつくりになっていて、故意にその切り替えを分かりにくくしている。
観客は少し経ってから時間軸が切り替わっていることに気がつく。

異なる時間軸が少しずつ重なりあることで、まったく異なるような人生の出来事が、他の時間軸の彼らに影響を与えているさまがより伝わってくる。
これは視覚的な情報が大きく変わらない、モノローグならではだと思う。

観客は、舞台の上にいるたったひとりの語り手の身振り手振り、表情、声のトーンで想像を膨らませ、情景を思い描き、共感したり、自分なりの解釈をしたり、笑ったり泣いたりする。

多くが観客の想像力に委ねられるということは、それぞれの観客が感じ取るもの、理解するものに振れ幅が大きいということだ。

「否が応でも想像力を膨らまし、自分なりの解釈をする」という行為そのものが鑑賞のプロセスのひとつとして組み込まれているこの舞台で、多くを感じ、見ることができたように思う。

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対比として挙げたいのが、Jakeが直近で出演していた映画"Spider-Man: Far From Home"はVFXのオンパレードで、視覚的情報量は圧倒的だ。目で見て理解できることで生まれる共通認識の大きさに改めて気が付く。

(VFXを多用するというのも、役者にとっては周りにフィジカルなものがあまりない状態で芝居をするという意味では、モノローグに通じるものがあるのかもしれない。)

これは私個人の問題なのだが、映画を観た感想がほぼほぼ

Tomがキュート + Jakeの顔面 + 映像がすごい =  5億点

で終わっていた。大真面目に。

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情報が少ない中で、想像力を駆使し、その分多くが見えてくる。

Broadwayの豪華絢爛なミュージカル群に囲まれて、荘厳なHudson Theatreで役者二人が生身で体当たりしている一人芝居。

"Sea Wall/A Life"は2019年9月いっぱいまでなので、少しでも気になる方はぜひご鑑賞されることをおすすめします。感想を聞かせてください。

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本題とは全く関係ないですがJakeが出演している作品で断トツ好きなのが"遠い空の向こうに"です。実話ベースで、夢に向かって諦めないことを改めて教えてくれる最高な映画なのでこちらもぜひどうぞ。




また覗きに来てくださるとうれしいです~!