高齢心不全患者に対する運動療法の効果、エビデンス
こんにちは☀️
現役理学療法士のまるです!
前回は運動療法の大まかな概要について書きました。
こちらを先に読んでもらえるとこの記事の内容がより理解しやすくなります(^^)
https://note.com/maru_riha1010/n/ne91db0a870d2?sub_rt=share_sb
それでは!
前回の記事を踏まえて、今回は様々な文献を照らし合わせながら、運動療法の効果、エビデンスに関して書きたいと思います。
最後まで読んでいただけると、運動療法の効果やエビデンスを改めて知っていただくことができます!
運動療法の効果
心不全患者に対する包括的心臓リハビリテーションは、本邦のガイドラインでクラスⅠの推奨であり、
・左室駆出率(LVEF)が低下した心不全患者に対する症状の軽減
・同患者の運動耐容能やQOLの改善
・再入院及び生命予後改善効果
が示されています。
しかし、ガイドラインで推奨されているこれらのエビデンスの推奨は比較的年齢層が低い心不全患者を対象としているのです。
では高齢心不全患者に対する運動療法のエビデンスはどのようなものがあるのか??
今後は心不全患者が増えてくる
日本は今後、超高齢社会となり、心不全患者は増加する一途を辿ると言われています。
推定ではありますが
2030年では約3700万人が心不全発症しているとの報告です。
私が働いている病院でも心リハ対象の約7割が75歳以上であり、対象年齢が高いなと自覚しております。
その対象の中で実際に運動療法のエビデンスとしてはどういう効果があるのか調べてみました。
高齢心不全患者における運動療法の効果
①前向き無作為化比較試験
対象:70歳以上の高齢心不全患者
分類:運動療法群 vs 通常治療群(運動療法介入なし)
①初期3ヵ月は病院内での監視型運動療法
②後期3ヵ月は電話によるモニタリングを使用した在宅での運動療法
を継続した結果を解析しています。
結果は、
6分間歩行距離の改善、再入院リスクの減少、QOLの改善
を示していた。
②前向き比較試験のメタ解析
7つの前向き比較試験のメタ解析結果です。
対象:530人の高齢心不全患者(70~81歳、NYHA分類Ⅱ-Ⅲ、LVEF45%未満)
運動療法:8週間以上の継続
中等度強度の有酸素運動
一部の研究はレジスタンストレーニングの組み合わせた運動療法
結果は、
運動療法の有無により全死亡や入院イベントに有意差は認めなかったが、6分間歩行距離、その他に健康関連QOLは改善を示していた。
詳細を確認すると、メタ解析の中に観察期間が短い研究を含んでいたり、運動療法の強度や持続時間が研究ごとに異なっていた。
6分間歩行距離が50mの改善を示すと臨床的意義があるとの報告があり、
最低8週間の運動療法では身体機能の改善の意義はあった結果になった。
論文を読んで感じたこと
論文を読んで私は
高齢心不全患者には運動療法は一定の効果があると考えています。
1つ目の前向き無作為化比較試験では約6か月の運動療法介入の効果です。
結果は6分間歩行距離の改善、QOLの改善だけでなく再入院リスクの減少を認めています。
2つ目のメタ解析では最低8週間の運動療法介入の効果となっており、
結果は1つ目の論文同様、6分間歩行距離の改善、QOLの改善は認めたが
再入院リスクの減少や死亡率は改善を示さなかった結果になります。
以上から高齢心不全患者では運動療法の質も重要ですが継続期間(運動療法の量)がより重要ではと考えています。その背景としてやはり、高齢心血管疾患患者様で有しているフレイルやサルコペニアが影響しており、筋機能改善に時間を要するためだと考えています。
しかし、実臨床で入院期間は長くとれず、社会生活に復帰した際の運動療法継続に関して更なる工夫が必要だと考えています。
まとめ
高齢心不全患者に対する運動療法は一定の効果を認めており、
介入期間としては最低8ヵ月は必要。
入院だけでなく社会生活に戻った際の運動療法継続の工夫が今後の課題と
考えています。
次回は
『レジスタンストレーニング』
についてです!
最後まで読んでいただきありがとうございました。