
『付加価値のつくりかた ~一番大切なのに誰も教えてくれなかった仕事の本質~』
本noteでは、読んだ本の感想や働き方のヒントをお届けしています。
今回ご紹介するのは、田尻 望著『付加価値のつくりかた ~一番大切なのに誰も教えてくれなかった仕事の本質~』です。
「付加価値」とは、どんな業種や職種でも欠かせないテーマですが、実際には「なんとなく理解しているつもりだけど、行動に落とし込めていない…」という方も多いのではないでしょうか?
本書では、“時価総額15兆円超・一人あたり営業利益額1億円超”など圧倒的な実績を誇るキーエンス出身の著者が、組織全体で付加価値を生み出す仕組みを解説しています。
そして本noteでは著書の内容を受けて、グローバル展開するユニクロとの共通点なども取り上げて、まさに企業規模や業界を問わず役立つ内容にしました。
ぜひ最後までお楽しみください!
こういう方におすすめ!
☑ 自分の提供価値が分からず悩んでいる人
☑ 付加価値の本質を理解して、仕事の成果を高めたい人
☑ 成功企業の仕組みを自社に活かしたい人
タイトル:『付加価値のつくりかた ~一番大切なのに誰も教えてくれなかった仕事の本質~』
著者:田尻 望
1.この本を読むことになった背景
前回の『ドリルを売るには穴を売れ』を読んだことで、顧客にとっての付加価値やベネフィットを捉えることの重要性をあらためて実感しました。
しかし、頭では理解していても「本質的に腑に落ちていない」「行動レベルに落とし込めていない」というもどかしさがありました。
そこで、別の角度から付加価値創出のエッセンスを学び直し、「日々の実務で実践できる形」にまで落とし込みたいと思い、本書を手に取りました。
2.この本のみどころ
①圧倒的成果を出す“キーエンス流”の仕組み
最初の見どころは「圧倒的成果を出すキーエンス流の仕組み」が学べることです。
本書の著者は、ファクトリーオートメーション用センサーや計測器で名高いキーエンスで4年間、技術営業(コンサルティングエンジニア)を経験した方です。
キーエンスと言えば下記のように驚異的な数値で知られる企業ですが、本書では「営業スキル」にとどまらず、企業全体としてどうやって付加価値を生み出すかという視点が解説されています。
☑ 時価総額15兆円(2025年2月21日時点)
☑ 社員平均年収2,000万円以上で高年収ランキング3位(2024年時点)
☑ 一人あたりの営業利益額が1億円超
https://diamond.jp/articles/-/352351
B2B企業ですが「現場主義」や「顧客の顧客まで見据える姿勢」などは、B2C企業など業種業界に限らず通じるヒントが満載です。
②具体的な付加価値の創り方
2つ目の見どころは具体的な付加価値の創り方が学べることです。
著者は、「お金を支払った側が笑顔で“ありがとう”と言ってくれるなら、高い付加価値を提供できている証拠だ」と述べています。
そして、高い付加価値を提供するためには下記2つの考え方が特に重要だとも述べています。
☑ 付加価値は「提供側」ではなく「受け手(顧客)」が決める
☑ まずは目の前の顕在ニーズをしっかり解消したうえで、潜在ニーズへアプローチし“プラスアルファ”の価値を提供する(ただし潜在ニーズを超えるとムダになる)
キーエンスが強いのは、顕在ニーズだけでなく、現場を徹底的に回って顧客も気づいていない問題点(潜在ニーズ)を探し出し、ソリューションに落とし込む文化があるからです。これは簡単なようでほとんどの企業ができていないと思います。
③成功する企業に共通する“7つのポイント”
最後の見どころは「成功する企業に共通するポイント」が学べることです。
本書ではキーエンスが持つ付加価値提供の仕組みについての話ですが、本書を読んで私が以前勤めていたユニクロとも多くの共通点があると思いました。
下記7つがユニクロと共通する考えるキーエンスの強みです。
①顧客の顕在ニーズだけでなく、潜在ニーズにも応えようとする
キーエンスではBtoBの現場で顧客となる工場や企業のみならず、その先にいるエンドユーザーの状況まで考え、「最終的にどんな課題を解決できれば価値が高まるか」を深堀りします。
これはユニクロの経営理念「顧客の要望に応え、顧客を創造する経営」とも通じるものです。商品を手に取る消費者にとって、どのような暮らしや体験がより良くなるかを常に念頭に置いて経営をしています。
②現場がすべての起点
キーエンスは技術営業として直接工場などの現場を訪問し、担当者との対話を通してリアルな問題を把握する文化があります。
一方のユニクロでも「現場・現物・現実」を重んじ、店舗スタッフの声やお客様の声を商品開発やサービス向上に生かしています。
③プロダクトアウトではなく、徹底したマーケットイン思考
キーエンスは「作りたいものを作って売る」プロダクトアウトではなく、「顧客が必要とするものを徹底的に調べ、それを形にする」マーケットインを徹底しています。
ユニクロも同様で、「ヒートテック」が生まれた背景には、「冬でもおしゃれを楽しみたい」「でも厚着をすると動きづらいし見た目もスマートじゃない」という潜在的な悩みを解決しようというマーケットインの発想がありました。
④高付加価値の状態で商品を標準化する
キーエンスでは個別の工場向けにカスタマイズを行う一方で、そうした技術を汎用化して“高付加価値な標準製品”として世に送り出しています。
ユニクロも多くの人に商品を届けられるように、特定の人が抱える課題を高いレベルで解決しながらベーシックスタンダードなLifeWearを提供しています。
⑤「世界初・業界初」で付加価値戦略と差別化戦略を両立する
キーエンスの新商品の7割が世界初・業界初と言われるように、突出したアイデアや独自性こそが高い付加価値につながります。一方で、ただの“珍しさ”に終わらせず、顧客が本当に求める付加価値を同時に実現している点がポイントです。
ユニクロも世界的ヒットを生み出したフリースやヒートテックなどのテクノロジー素材を活用し、低価格かつ高品質を同時に提供することで差別化に成功しています。
⑥卓越性を追求するために、自社の技術やリソースにこだわりすぎない
キーエンスは自社技術だけに固執せず、世界中から優れたアイデアや部品、技術を見つけ出して組み合わせています。その結果、世界初・業界初のプロダクトを続々と生み出せています。
ユニクロもまた、東レとの共同開発で高機能素材を実現したり、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)と連携して世界の難民問題に取り組んだりと、卓越性を追求するために領域を超えたコラボレーションで社会的価値を生み出す姿勢を持ち続けています。
⑦上記の①~⑥を仕組み化して、全員で全てを同時に実行している
ここまで挙げたポイントを経営者や一部の優秀なチームだけが取り組んでいるのではなく、組織全体が同じ方向を向き、同じタイミングで実行しているところに、キーエンスやユニクロの強みがあります。
ユニクロは「全員経営」を掲げ、世界中の店舗スタッフやアルバイトを含めて同じ価値観・戦略を共有し、実行する文化を育てています。
キーエンスもまた、各現場の営業・開発が常に連携して顧客と向き合い、新しい価値を創造する循環を絶やしません。
だから誰も真似したくても真似ができず、業界内外で圧倒的な差別化を実現できています。
これらの「成功企業に共通するポイント」については、また別の機会に深堀りをして記事にしたいと思います。
3.この本を読んで実践すること
①まずは顕在ニーズを確実に満たし、そのうえで潜在ニーズに踏み込む
まずは顕在化している目の前の問題を軽視せず、一つひとつ丁寧に解決しながら相手がまだ気づいていない潜在ニーズを満たせるようにしていきたいと思います。
潜在ニーズを満たすことも大事ですが、まずは基本的な顕在ニーズをしっかりと満たせるようにしていきたいと思いました。
②卓越性を追求するためにパートナーシップを積極活用する
自分や自社でカバーしきれない専門分野や技術力が必要になったとき、外部との連携を積極的に検討する姿勢は必要不可欠だと再認識しました。
自社のビジョンである「問題解決の民主化」を実現するためにも、一人の得意分野にこだわりすぎず、さまざまなパートナーと協力することでより高い付加価値を提供していきたいと思いました。
③成功企業の共通点を“再現可能な形”で取り入れる
キーエンスやユニクロの事例から見えてきたように、グローバルで成功している企業には一定の共通要素が存在することが再確認できました。
これらのエッセンスを抽象化し、自社や自分の仕事へ応用できるよう“再現可能な形”で取り入れることが大切だと感じました。
また日本の中小企業やスタートアップでも実践できるよう、体系化してサービス化する道を探るなど、継続的な研究や実践を行いながら、その成果を広く還元していきたいと思います。
4.まとめ
本書『付加価値のつくりかた』は、顧客が本当に求めている価値にどのように応えるか、その具体的なアプローチを示してくれます。特にキーエンスの事例を通じて見えてきた“成功企業の共通点”は、業種やビジネスモデルを超えて応用できるヒントが満載です。
これからもキーエンスやユニクロといったグローバル企業に学びつつ、その共通点を抽象化し、自社規模や業界に合わせて実行できるようにしていきたいと思います。
「何をしていいか分からないなら、まずは成功企業の仕組みを研究する」
この視点を持ち、実務に落とし込む姿勢が新たな価値創造の一歩になると再認識できました。
感謝
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
もしこの記事が参考になりましたら、「スキ」で応援していただけると嬉しいです。
今後の更新をお見逃しないよう、ぜひ「フォロー」もよろしくお願いします!