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【車上狙い】窃盗事件で執行猶予判決の翌日の犯行。今度は強盗の疑いで逮捕。

再犯報道

2023年9月、コンビニ駐車場に停めた車の運転席で、10代女性が買物に行った友人を待っていたところ、男(47)が助手席に乗り込んで、女性の肩や腕をつかんだり引っ張ったりと暴行を加えた。女性が車外に逃げ出すと、男は車内にあった財布などが入ったバッグを奪って逃走した。女性に怪我はなかった。
男は防犯カメラ映像の解析によって強盗の疑いで翌日逮捕、その後「暴行・窃盗」で起訴された。被告人は「酒を飲んでいて記憶にない」と、容疑を否認している。

この報道があったのは、男が被告人となっていた別の窃盗事件の裁判が終わって間もなくのこと。判決で執行猶予がついた翌日の犯行でした。
ここからは、その執行猶予がついた裁判の傍聴記録です。

連続車上狙い(罪名 窃盗)

事件概要/こども園送迎の隙に

①現金 約23,000円の入った財布とスマホを窃取
6月1日 8:30頃、被害者Aさんは、こども園近くの薬局駐車場にエンジンをかけたまま車を停め、子どもを園に送り届けた。
Aさんは8:40頃駐車場に戻り、駐車場を出てすぐに助手席のバッグからスマホを取り出そうとして無いことに気づき、忘れたかもと思い家に戻る。しかし家にも無く、再度カバンを確認すると財布も無かったことで、盗まれたことに気づき警察に届け出た。

②現金 約300円と商品券2000円相当の入った財布を窃取
5月31日の午後、被害者Bさんはスーパーで会計する際に財布が無いことに気づき、警察に遺失届を出した。
6月1日に、同じこども園に通う保護者が車上狙いの被害に遭ったと聞き、前日朝の送迎時、同じ駐車場で財布の入ったリュックを後部座席に置いたまま、車を離れたことを思い出して警察に相談し、被害届を出した。

被告人は犯行を認めているため、量刑が争点となる。

検察側証拠/生活保護費が減らされる

被告人は中卒後、職を転々とし現在は無職。アルコール依存症や末梢神経傷害の持病があり生活保護を受給していた。同種前科を含む前科4犯、直近の刑の執行猶予期間は終えている。
事件当時は、食道ガンのため入院中だった。GWのあと入院し、6月6日に手術を受けることになっていた。
被告人は以前にも入院経験があり、入院日数が28日を超えると生活保護の受給金額が下がることが分かっていた。入院期間は手術の日までで30日。28日を超えるのは間違いない。つまり6月の受給額は少なくなるのだ。

被告人は入院中ほぼ毎朝、病院を出ると向かいにある薬局と隣接したコンビニとの間でタバコを吸っていた。すると近くのこども園に送迎する親が、薬局の駐車場に車を停め、鍵をかけずに車を離れるのを目にして「盗めるかも」と思った。車内に近づくと中を確認してドアを開け、バッグの中から財布をとる。そんな犯行を繰り返していた。

①の事件は、車内にあったバッグから財布だけ盗るはずがスマホも同時につかんでいた。
車を降りて人目につきにくい場所に行くと、まずスマホを確認し、次に財布の中を見た。財布には現金が2万数千円。Pontaカードと現金だけを抜いてスマホと一緒に薬局裏の川に捨てた。
捨てた財布には免許証、保険証、キャッシュカード、クレジットカード、デビットカードや会員カードが入っていた。スマホとカバーは合わせて6万円相当。スマホカバーの中に現金1000円も入っていた。

②の事件は、車内のリュックを開けて中を確認し、財布だけを取り出すと、ズボンのポケットに入れて病院に戻った。
自分の財布よりコンパクトでいいなと思い使っていた。小銭の他に知っている店のカードがあり、ポイントがあれば使おうと思った。カードサイズの鏡も変わってるなと思いとっておいた。他のものは捨てた。

両方の事件共に、病院・薬局の防犯カメラ映像などに被告人の行動が映っており、映像を確認した病院職員が、スキンヘッドや腕の刺青、杖をついて歩く姿で間違いなく被告人であると証言した。
また、盗った物のうち名前が書いてあるものは捨てたとも供述している。川に捨てた物もあれば病院内で捨てた物もあり、一部は見つかった。Aさんのスマホは見つかっていない。被害者はそれぞれ厳しい処罰を望んでいる。

被告人質問 /1万あれば大丈夫そう

弁護人「28日以上入院すると生活保護の金額はいくらになるんですか」
被告人「いつもは72,000~73,000円なのが、23,000円ぐらい」
弁護人「以前減額された後、生活に困ったということですか」
被告人「はい」
弁護人「今回は普段タバコ吸ってる場所から駐車する車が見えたと。近づかずに車の施錠がどうなっているか分かった?」
被告人「(施錠)されてるか見に行きました」
弁護人「仮にロックされていたら?」
被告人「何も出来ない」
弁護人「ロックを開ける能力はありますか?」
被告人「ない」
弁護人「ロックされていれば盗ることは無かった」
被告人「はい」
弁護人「(犯行後)現金でGoogle Playカードを買ってますね。何のためですか?」
被告人「一応生活保護費と…いつ退院できるか分からないので…」
弁護人「娯楽のため?」
被告人「はい」
弁護人「生活に困ると思って盗ったんじゃなかったんですか?」
被告人「それは…手術終わって退院して、(次の生活保護費)支給日までに1万あれば大丈夫そうと思って、残りはゲームに使ってしまった」

食道ガンの手術は成功しており、退院後は半年に1回の検査だけになる。
以前からある末梢神経障害の症状は、常時手足のしびれがあり、重い物を持って歩くことが出来ない。被害弁償の申し出はしておらず、するにしても月1,000円程度しか無理と話した。
また2か月ほどの身体拘束中コロナに感染したこともあったという。

検察官の質問では、犯行を繰り返した理由や、再犯について反省を促す質問があった。被告人は「お金に困ってやって…ま、申し訳ないってこともあったんですけど…鍵かかってない車から盗ったのは悪かったです」「前は抹消神経痛だけだったんですが、今はガンもあるので…今後は真面目に生活していきます」と答えた。

裁判官が盗った理由を確認すると、被告人は「もちろんお金を減らされるのが、ガンのこともあったし…朝たまたま施錠してなさそうな車があって、バッグあったんで一応…見てみたら、盗れるんだな、と思って」と答えた。

論告/求刑 懲役2年

・大胆な手口で悪質
・同種前科を有し、再犯可能性が高い
・責任を自覚させるため厳しい処罰が必要

弁論/執行猶予付き判決を求める

・被害額が大きいとまではいえない
・Aさんには3万円程度還付予定(※具体的な説明はなかった)
・無施錠の車から窃取したに過ぎず、計画性は認められない
・生活保護の減額の不安から犯行に及んでおり、強い非難を加えることは出来ない
・病気治療中であり、社会内での更生が適当
・犯行を認め余罪も申告し、十分反省している
・同種前科は26年以上前

被告人最終弁論

「身勝手な行為で被害者の方に迷惑をかけて、本当に申し訳ありませんでした」

判決の日は傍聴に行けなかったのですが、強盗で逮捕という記事が出たことで、この裁判で執行猶予がついたことを知ることになりました。
被告人は、食道ガンで入院しながらタバコを吸っていたり、生活保護の減額が心配と言いながら盗ったお金をゲームの課金に使っていたり、記名のあるカードは捨てても気に入った財布は自分で使うことにしたりと、ツッコミどころ満載でした。

それにしても釈放翌日に再犯、それも強盗容疑で逮捕とはビックリでした。
車から人が降りたのを見て中は無人だと思ったのか、それとも酔っ払っていて、やり方が雑になったのでしょうか。

勾留されたまま裁判を受ける被告人は、判決で執行猶予がつくとその場で釈放されます。かといってその日に生活保護が支給されるわけではないでしょうから、手持ちがなければ突然困窮してしまいます。身内に頼るなどできればいいのですが、それができる状況ではないからこそ、繰り返すのだろうと想像します。

ちなみに被告人が入院していた病院は『無料低額診療事業』(生活に困窮している人を対象に、無料または定額で診療する病院。医療費はその医療機関が負担している)を実施しているありがたい病院です。



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