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【エッセイ】「幸せ」を過去にしないびっくりドンキー
小さい頃、祖母の家に遊びに行くと、いつも連れて行ってくれたハンバーグ屋さんがあった。
少し薄暗い中で鉄板をジュージューさせ、美味しそうな匂いと共にご馳走が目の前に運ばれてくる……
私は裕福な家庭で育ってはいないので、こんな贅沢なご飯を食べるのもおっかなびっくりで……でもよほど私は嬉しかったんだろう。数十年経った今でも「あのハンバーグの光景」が目に焼き付いていた。
それが岩手県盛岡市にあったハンバーグ屋さん。
「ベル」
あの、私の記憶のお店。
子供の頃に食べたあの店が…
「びっくりドンキーの元祖」ということを数十年後に知った。
すぐにはあの店と結び付かなかった。
チェーン店ではなかったし、小さい頃の記憶では少し高級なお店だった。
あの美味しかった記憶と、大人になって食べる目の前のチェーン店のハンバーグ…見た目は全然違っていた。
キチンと整形されすぎて工場で作ったんだろうな、とすぐにわかる見た目と味のハンバーグ。
正直、それを知った当時はガッカリした。
店への足も遠のいた。
だって自分の記憶の中の美味しさと全く違ってたから…
きっと子供の頃の記憶が美化されてたんだろうな…と。
でも数年後に、仕事の付き合いでまた訪れた時……
お米の味とお味噌汁の出汁の美味しさが格段に上がっていた。
メインであるハンバーグから工場で作ったであろう感が消えて、ジューシー感満載の肉汁で口の中が美味しさであふれていた。
あーー…………やっぱり!
びっくりドンキーは「ベル」だったのだ。
私の記憶の美味しいハンバーグは【過去】では無かったんだ…
そうして「幸せ」を過去にしないために、今もこっそり確認しに来る。
びっくりドンキーという名の幸せを確認しにね。
今日もまた、ごちそうさまでした。
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自分の過去を見直すため、その源を書きたい欲に駆られることがあります。それが私のnote【エッセイ】の存在意義です。もしよろしければ箸休めに……
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