馬鹿
「疲れたよ」
「なにが?」
「君を呼ぶことにさ」
「どうして?」
「君は呼ばれてから一時間も経たないと起きてこない」
「だから?」
「だから、君を呼ぶことに疲れたんだ」
「なら、呼ばなければいいじゃない」
「それは困るんだ」
「どうして?」
「僕は君に来てほしいから」
「そんなの、勝手ね」
「ほら、声がもうカラカラさ」
「なら、ドロップを舐めたらいいじゃない」
「そんなの、効かないよ」
「呼ぶのをやめたら?」
「呼ばなきゃ君とは会えないじゃないか」
「そんなに会いたい?」
「ああ」
「どうして?」
「君は僕の潤いだからさ」
「ほんと、勝手ね」
君はきゃらきゃらと嗤う
知ってるさ
僕の我儘だってことは
でも、いいじゃないか
疲れるまで誰かを愛せるって
却って気持ちがいいよ
僕がそういうと、君は吐き捨てた
「あなた、馬鹿?」
今度は僕が嗤う
「なによ」
「よく眠るのも悪くない」
「不眠症のあなたには羨ましいことでしょ?」
「ああ」
「また、呼びにきて」
「起きないくせに」
僕がそういうと、君は尻尾を振った
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