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時を戻せず止める婦人

腕時計が壊れた。
望めば直せるのかもしれないが、
購入費用よりも数倍かかりそうなものに手が出せない。
直したい気持ちはあるけれど。


専門学校卒業後、
ワーキングホリデーでNZに行く友人に
応援の気持ちを込めて、
もう一人の友人とお金を出し合い、
3人でお揃い(色違い)の腕時計を買った。
リーズナブルだし、
ブランド品でもない。
バイト生活で、
友へ贈る物としては一番値の張る物。
友とお揃い。
別々の道をゆくが、
それぞれの進む道で共に頑張ろう。
そんな意味を込めたのかどうかは置いておいて。
まだ折りたたみの携帯電話が走りの時代、
(ガラケーってことです)
時計は身に付けることがちょっぴり大人になったような気がしていた。


22の春、
わたしは就職した。
その時に、
友達二人からお揃いの腕時計を贈られた。
新しい第一歩を踏み出すための背中を押してくれた。


結婚する時、
友達二人から掛け時計を贈られた。
自分だけではなく、
家族で時を刻む共としてほしい。
当時の家族の一人はいなくなったけど、
今でも我が家のリビングで時を教えてくれる。


結婚してから、
腕時計をすることがなくなり、
電池が切れて時を止めた。
思い出としてしまっておいた。
10年近く止まっていた。


5年前、
仕事をするようになったので、
再び針を動かした。
友から贈られた時計である。
それ以来、
出掛けるときはいつも共に。
忘れることがあると左手首が寂しい。


上の子が高校にあがり、
腕時計をするようになったのでプレゼントをしたが、
わたしが持っているような時計が望みらしく、
ならばもう一つの時計も動かそうか。
そうして動き出したのが一番目の時計。

壊れたのは一番最初の時計。
電池が切れたと思い、
電池交換に持ち込んだが、
動かなかった。
ちょっと動揺していたのかもしれない。
店員に電池が原因ではないと言われたときに、
直せるのか聞いてみればよかったのに、
そうですか、
と一言で受け入れてしまった。
ちゃんと手入れしてあげていた訳でもないし、
今更しがみつくんじゃないよ。
でもやっぱ寂しい。
自分の一部を失ったような。


今わたしが使用している時計も、
電池の消耗が早い。
前回から1年未満で電池交換。
むむぅ。
その日が近いかもしれない。
直せるように貯めておこうかな。


最後まで読んでいただき、
ありがとうございました。

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