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香を憶うパラレルワールド

先日見た夢。
タランチュラを手のひらに乗せ、
「この子外に逃がすよ?」と言いながら、
窓から外へ出してあげた。
手のひらに感触が残る。
ちょっとフワッとしていた。
触ったことも、
実物を見たこともない。


まったく本編と関係ない話からスタートした理由は、
最近まったく記事を書くことが出来なかったから、
とりあえず助走だ。




ここのところ聞いている音楽は、
先日配信された「The White Lounge」のサウンドトラック。
そのエンディングに歌われたのは、
香水とのコラボで作られた曲「フロリジナル」。

⚠こちらは既にオンライン販売されていないためご注意ください。

⚠わたしは香水の香りを知りません。

150年以上前の19世紀中頃、英国の化学者ピースは、その著書「The art of Perfumery」の中で、音階上に46種類の天然香料を配置し“香階”という概念を考え出した。音楽を聴きながら、同時に香りも楽しもうというわけである。

日本調香技術普及協会 香りのコラム 香りと音楽より

上記にあるように、
各音に香りがそれぞれ割り当てられている。
香水の香りを先に決め、
選ばれた香りに当てられている音(11音)のみを使用して作成されたのが「フロリジナル」だ。
曲調はとてもリズミカルだが全体的に淡白。
ミセスの曲中でテンポを変えたり、
転調に転調を繰り返す等の大きな動きはない。
全体的に低い音が並び、
カラオケで原曲キーで歌うには低すぎてキツい。
音が決まっているからなのかもしれないが、
初めて曲を聴いた時は今までのミセスとは違う感じの曲だなと思った。
だからといって決してつまらない曲ではない。
聞けば聞くほどクセになるのだ。




「愛してる」
なんかもう要らないよ
今だけただ抱きしめてほしい
私は嗅ぐ
完璧な思いはこの世に無いと
貴方を嗅ぐ

Mrs.GREEN APPLE/「フロリジナル」より

「愛してる?」
なんてもう聞かないよ
どうせ居なくなるなら触れないで
私は嗅ぐ
ただ断片に
思い出を美しくしていたいから
空を嗅ぐ

Mrs.GREEN APPLE/「フロリジナル」より

「あぁ生きてる」
なんてそう思えやしないよ
今だけ香りに包まって
私は知る
完璧な思いはこの世に無いと
私を嗅ぐ

独りじゃないと
私を嗅ぐ

Mrs.GREEN APPLE/「フロリジナル」より


今側にいる恋人の纏う香り。
相思相愛になれない。
どれだけ愛を伝えられても、
どうしたって愛を返すことができない自分がいる。
どこか相手との間に一線を引いてしまうのかもしれない。
二人の関係が終わるのだという感覚があるのかもしれない。
これ以上恋人との思い出をイヤな記憶に変えたくない。
キレイなまま終わらせたい。


なんだか寂しい曲だ。
それと同時に違和感もある。


大切な人に大切にされたい
誰かに「ここに居ていいよ」って
時間じゃない次元へ行きたい
追われる側になれない僕らは
欲しがりすぎてる

Mrs.GREEN APPLE/「フロリジナル」より

時間ではなくて「次元」。
追われる側になれない「僕ら」。
彼はいつも追われているのではないか?
僕らとは彼と誰?


わたしが行き着いた答えは、
「パラレルワールド」。
もしくは「鏡」だ。


目の前に貴方がいる。
触れることはできる。
香りもある。
手に届くほど側にいるのに、
愛を何度も伝えているのに、
お互いがお互いに愛されていないと感じてしまう。あぁして欲しい、
これを理解して欲しい。
愛を試すように、
願うことは次々溢れてくる。
心が触れ合わない。
まるでパラレルワールド。
同じ時間を過ごしてもすれ違うのならば、
時空を超えて貴方に必要とされたらいいのに。


これは大森元貴の恋愛模様を歌っているのだろうか。
いや、
おそらく人間関係全般においてなのかもしれない。
そこにはファンとの関係も含まれる。


彼はライブなどで、
ファンへ「愛してる」と伝える。
おそらくファンも「愛してる」と答えている。
相思相愛のように思える。
でも、
お互いにその愛が伝わっていないと感じる事がある。
彼らが人気になればなるほど、
愛が広く遠くへ行ってしまう感覚になり、
「愛されていない」とまで思ってしまう。
自分はもう特別ではない、と。
そして彼もまた、
色んな形で愛を伝え続けているのに、
届いていないことを感じてしまう。
正確には、
一部に伝わっていないだけだと思うのだが、
その「声量」が非常に大きいがために、
愛を受け取っている人の声が届いていないか、
信じられなくなっているのかもしれない。
愛を伝えてもらっても、
いつまでも変わらず愛し続けてくれる「完璧な思いはない」。
どうせ離れるなら、
傷つける前に離れてほしい。
そんな風に心に壁を作る自分で自分を孤独にしていることはわかっている。
それでも耐えられないから強がってしまう。
本音は、
愛してくれているなら、
どうかこれからの自分を信じて見守っていて。
僕が思い描く世界はもっともっと貴方へ愛を伝えることだから。
どうか信じていてほしい。




日本には、
書道や茶道・華道といった独自の芸道があるが、「香道」というものもあるそうだ。

香道では香りを「嗅ぐ」のではなく「聞く」と表現し、「沈香(じんこう)」などの天然香木の香りを楽しみながら、深い精神世界へといざないます。香木のひとつひとつ微妙に異なる香りを聞き分け、複雑な香りを追い求めることで感受性を育む。香り、嗅覚というものをこのような芸道にまで昇華させたのは、世界でも唯一日本だけです。

〜中略〜

香りを「聞く」とは、香りを「嗅ぐ」こととは異なり、心を香りに寄せながら香りを味わうことを意味しています。香りを聞き、自分と向き合う時間を作ることは、多忙な現代社会を生きる私たちにとっては瞑想(メディテーション)に近く、心を落ち着ける奥深いひと時と言えるでしょう。

https://store.belairlab.com/blogs/belair_lab_magazine/2021_06_21_4?srsltid=AfmBOorkVqey6B6UwDbe_kxPmEydOo-Nr2mhJaynWYi6wEYEeBYtafvP


大切な人はいつまでも側にいてくれるなんて高望みはできないけれど、
その人の香りを纏っていることが、
今自分は独りじゃないのだと知ることができる。

独りじゃないと
私を嗅ぐ

Mrs.GREEN APPLE/「フロリジナル」より


最後まで読んでいただき、
ありがとうございました。

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