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「思い出のとき修理します」

大好きなアニメだったり、
ドラマだったり、
漫画だったり。
はやく続きが読みたいと気がはやるものだが、
いざ終わりが見えると「終わってほしくない」と矛盾した感情がある。
終わってしまうと、
その先のストーリーは自分の想像の中で展開させるしかないのだけれど、
作者が作品を仕上げるために学んだであろう知識と、
作中のキャラクターと作者自身にしか知り得ない真実をわたしは想像するのみで知ることは叶わないのだから、
やはり作品が終わると、
キャラクターたちが動きを止めてしまう。
それが寂しいのだ。


谷瑞恵さんの作品の中で一番好きな作品が、
「思い出のとき修理します」シリーズだ。
全4巻で完結している。

津雲神社商店街にある「ヘアーサロン由井」で暮らす為にやってきた明里。
そこはほとんどがシャッターを下ろしている。
明里も店舗経営のためではなく、
仕事への自信喪失と恋人との別れによる傷心のため、
あらゆるものから逃げ、
幼少期に過ごしたたったひと夏の思い出のあるこの商店街へやってきた。


店舗の斜め向かいにひっそりと建つ時計屋さん。
そこの店主:秀司は明里と同じ年齢。
時計修理を生業としているが、
若いながらも商店会長でもある。
店舗のショーウィンドウに銅板のプレートが立て掛けられており、
そこには金属の文字が貼り付けられている。
「思い出の時 修理します」
信じるわけでもないが、
何か修理したい思い出を持つ客が時計の修理依頼とともに訪れる。


様々な時計にまつわる思い出がショートストーリーで展開されていく。
明里自身の抱える思い出も、
時計屋である秀司自身の思い出も、
精密な機械を慎重に開くように大事に扱い修復を試みる。
人通りの少なくなった商店街の中にあることもあって、
すごくゆったりとした時間の流れを感じられる。
そのテンポが心地よい。


津雲神社の社務所に住んでいる大学生の太一。
神社の親戚筋とかで手伝いを兼ねているらしい。
見た目はチャラチャラしているが、
非常に子供っぽい憎めないキャラだ。
よく明里を巻き込んで自分の興味のあることに首を突っ込ませ呆れられているが、
逃げるようにやってきた明里が商店街での居場所を得るのにひと役買っている。
他にもパン屋・写真屋・洋裁店・酒屋・青果屋など、
普通に街中で暮らしていたらこんなに近所の繋がりって作れるだろうか。
今では町内会への入会など面倒に思ったり、
隣に住む人の顔も把握していないような時代になったのに、
煩わしいばかりじゃないのかもしれないと思える。


修理された思い出は、
その思い出の持ち主の背中を押して、
その人がまた前へ進む力になってくれる。
そしてまた新しい出会いに繋がる。


最後まで読んでいただき、
ありがとうございました。
持っている谷さんの本は読み終えたので、
谷さんシリーズは一旦ここで終了です。

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