見出し画像

ユーミンが教えてくれた色鉛筆でジャズ

たとえ趣味レベルでも長年音楽をやっていれば楽譜を読むことは誰でもできると思うし、そんな特別な能力でもないと思う。楽譜は読めないが美しいメロディを作れる有名歌手の方のお話なんかを聞くとその方が特別な能力な感じがしてかっこいいなと憧れてしまう。ウクレレをやっていると音楽初心者の方に遭遇することが多く年齢層も割と幅広い。ウクレレやギターにはタブ譜という弦に見立てたような譜面があり、視覚的に場所を捉えて指を動かすことができるので
五線譜よりも入りやすい。タブ譜のおかげでウクレレの楽器としての敷居が低くなっているような気もする。

ウクレレを始めてから10年以上になるが、ごく最近までタブ譜でしか弾けなかった。ウクレレは4弦の楽器でタブ譜は4本線。習いはじめの頃はこんな簡単な楽器はないと思った。コードを三つぐらい押さえられるようになれば伴奏だけなら簡単に1曲が弾けるようになる。好きな曲だったりすると尚更感動した。五線譜なしでこんな簡略な楽譜で少しの練習で一曲が仕上がるのはとても楽に感じた。

ウクレレの4弦は開放弦でGCEA、ソドミラになる。私の頭の中ではソドミラそれぞれの音で始まる鍵盤が縦に4つ並んでいるような気がしてウクレレの構造と五線譜を頭の中で繋げることをずっと先延ばしにしてきたのだ。(今から思うと最初にやっておくべきだった)でもウクレレでジャズの勉強を始め音楽理論に再び手を出し、作曲をやるようになるとやはり五線譜の方がわかりやすい。弾くだけならタブ譜のほうがわかりやすいのだが理屈をたどるにはやはり五線譜の方がいい。

スケール練習を重ねるうちに徐々にウクレレの弦の上にもピアノの黒鍵と白鍵に感じるような「音の位置」感覚を指が覚え始めてきた。

ジャズの学びの典型はよく知らないが、私はまず即興演奏にいきなり入る前に「書きソロ」という段階を経た。コード展開を分析し理屈に合ったスケールを選び、その中から音を探してフレーズを作る。フレーズを作ったら、タブ譜に書き込み、それを上段の五線譜にも転記する。「書きソロ」というのは「書いてあるソロパート」という意味で演奏しているのを見るとまるでアドリブをしているみたいだが実は譜面を読んで弾いている状態。全然本物のアドリブではない。五線譜でもタブ譜でも音階を書き入れるのはそんなに難しくないが自分で作ったリズムを音符化するのはかなりの難易度だ。鼻歌でリズムを歌ったらそのリズムを音符化してくれるアプリはないかなとよく思った。というわけで私は音階だけを書いたちょっとずるい「書きソロ」楽譜でリズムは感覚か記憶任せでしのぐことが多かった。

時が経ち、「書きソロ」を何度も繰り返すと、えらいもので本当に即興演奏の芽生えみたいなことができるようになる。でも、そこにも新たな壁が。音符を追って弾かないということはつまりコードと小節だけをみて演奏することになる。そうするとよく陥るのが、どこを弾いているのかわからなくなる、ということ。一つの曲をしつこく深掘りしてやるとコードの流れが体に染み込むのでどこを弾いているかわからなくなっても再び軌道修正することはできるが、的確にどこにいるのかを常にわかる感覚が欲しいとずっと思っていた。

そしてその解決のヒントはユーミンがくれた。きっかけはaudibleで見つけたユーミンの小説。内容はユーミンの生い立ちから松任谷さんとの結婚ぐらいまでの話。長年のファンである私には結構たまらない内容だったので6時間ぐらいの音声をほぼ一気に聞いてしまった。ユーミンには音楽のコード進行が色で見えるらしいという話は結構有名な話だと思うがそういったエピソードが小説の中にも出てきた。

コードが色で見える。すごいな。。と改めて思った。
コードが色で。コードが色で。。。
頭の中で想像してみた。凡人には想像できなかった(笑)

でも、その時、一つのアイディアが舞い降りてきた。
楽譜を色で塗ればいいんじゃない?
私はどこかにあるはずと思った色鉛筆を引っ張り出してきて
練習中のNight and Dayの楽譜をテーブルの上に置いた。

数えるとNight and Dayには全部で7つのコードがあり
私のミニ色鉛筆セットは8色だった。急いでコードとスケールだけを書き出すための五線譜タブ譜を一枚用意し、音階を五線譜とタブ譜と両方書いてみた。
そしてその7つのコードにそれぞれ色を割り当てた。一番よく出てくるE♭アイオニアンには黄緑を大好きなDHP5には水色を、特徴的に感じるFドリアンには赤を使ってみた。これは使用コードの一覧表のようなものだ。そして、さらにアドリブ用の一枚の楽譜のタブ譜の下あたりに色で線を引いてみた。楽譜が一気に華やかになった。楽譜全体が7色で彩られるとコードの雰囲気や長さがパッと一覧できる。

そして伴奏音源と合わせてぶっつけ本番で即興っぽい練習をしてみた。
信じられない効果だった。色で線を引いただけなのにどこにいるのかが
とてもたどりやすい。

頭の中にコードと伴って色が思い浮かぶようなアーティストっぽい感覚は
凡人の私には一生やってきそうもない。でも少なくともこの色鉛筆で彩られた楽譜でちょびっとだけユーミン気分を楽しめそうだ。


いいなと思ったら応援しよう!