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ハイジとペーターの日本語レッスン
ある日のレッスンで中国人の生徒さんと名前についての話題で盛り上がった。
彼曰く、人口の多い中国から見ると欧米人と日本人の名前は同じ名前がとても多く名前の幅が少ない気がするらしい。全く同じことを欧米人の名前に対して思っていたので、日本の名前の幅もそう見えるとはさすが大国の視点と思った。
ドイツ人とのお付き合いもかれこれ20年以上になる。何人の生徒さんに出会ったか数えてはいないが、同じ名前が本当に多い。初めてペーターさんという生徒さんに出会ったときは嬉しかったが、二人目のペーターさんには感動はなかった(笑)一番多い男性の名前は多分クリスチャンさんだと思う。あなたは私にとって6人目のクリスチャンさんです!と言ったら、よくある名前だからねと6人目のクリスチャンさんはにっこり笑った。日本人との出会いで6人も同じ名前には会ったことがないので(下の名前)やはりヨーロッパ人の名前の方が日本よりさらに少ないと思う。
今から10年前に担当した生徒さんに私の妻のレッスンもお願いしたいと言われた。もちろんです。喜んで!ところで、奥さんのお名前は?と聞くと「ハイディです」ハイジはHeidiと書く。発音も実はハイジではなく、ハイディが近い。
内心、(ハイジ来たー!!)と思った(笑)その気持ちは正直に言ってみた。
「日本では「アルプスの少女ハイジ」というアニメが昔とても人気で、今でもテレビCMに出てくるぐらい有名なんです。私は、ハイジさんにいつかレッスンをしてみたいと思っていたんです。やっとハイジさんに会えます。ありがとうございます。」ハイジさんのご主人の生徒さんは愉快そうに笑った。(昭和の日本のアニメはドイツでも放送されていて「ハイジ」はもちろん「ミツバチマーヤ」なんかも挿入歌は全然違うがドイツ人もよく知っている。)
その年の夏、私は久しぶりにドイツに一人旅に出た。ハイジさんのご主人の生徒さんが私のうちにも来てください、妻にもぜひ会ってほしいと言われ、ドイツ滞在中に訪問させていただいた。深い森が近くにある小さな村にある大きなお宅でハイジさんは私を迎えてくれた。ドイツ人にしては小柄で私とそんなに背丈が変わらない感じだった。お庭のテーブルでお手製のケーキと美味しいコーヒーをいただいた。
ハイジさんはとても優しい素敵な女性。年明けから始まる彼女のレッスンがとても楽しみだった。「日本でお待ちしていますね」
日本に帰国後、レッスン依頼の正式な契約書が会社から届き、目を通しているとそこにはみた事もない名前が書いてあった。アーデルハイド?誰?と一瞬混乱したものの、それがハイジの正式な名前だと知る。グレゴリーがグレッグ、ロバートがロブになるのは納得だが、ハイジの本名はアーデルハイドなんだなぁと妙に感心した。
今、私はaudibleでハイジをドイツ語で聴いている。最近偶然見つけて聞き始めた。本当にSVOしか出てこないぐらいの短文ばかり。とても聞きやすく書き言葉の過去形が出てくるのもちょうどいい勉強になる。ドイツ語の過去形は普通会話では過去分詞が使われるが、過去形は書かれたもので使われることが多く日常会話ではほとんど聞かない。今のところ100%はわからないが、筋は追えるぐらい理解できる。ハイジとおじいさんの出会い、ペーターの登場。藁のベッドが出てきたのもわかった。(あとでdeepLに聞かせて文字起こしして聞き取れない部分を調べながら繰り返し子供のように聞こうと思っている)
山の生活は長くは続かず、やがてハイジはフランクフルトに連れて行かれる。
そこに待っていたのはロッテンマイヤーさんだ。クララも出てきた。クララは車椅子に座っている。本の中でも足が不自由なようだ。そこでロッテンマイヤーさんにハイジは名前を聞かれる。ハイジは私の名前はハイジだという。でもロッテンマイヤーさんはそれを許さない。いいえ、本当の名前はハイジではないはずです。あなたの名前はアーデルハイド。アーデルハイドと名乗りなさい。
この一説で私はドイツの森の近くに住んでいる小柄なハイジさんを思い出した。
お元気だろうか。お元気だといいな。
女性の名前で一番ご縁が多いのはクリスティーネとザビーネだ。
今、週一でやっているlanguage exchangeの友人の名前もザビーネ。
でも、まだクララさんのレッスンをしたことは一度もない。