せめて今夜は一度
せめて今夜は一度
冷たい風に乗ってみたい
アーケードのガラスに映る
秋の色と冬の匂い
最後はきっといい終わり方で
映画を観た後の街に雨が降る
誰もが重い荷物を背負っている
誰もが花束を抱えて生きている
会いたいと思っていた人とも
すれ違うだけ、何も知らずに
悩んでばかりの惨めな心を
ぶん殴ってやりたいと思う
もう二度とは戻れない日々の中で
さよならの意味を知っているかい
せめて今夜は一度
井の頭通りの風をあつめて
缶ビールの蓋から覗いている
さみしさに声をかけてみたい
おぼつかない足取りで歩いていく
笑顔の素敵なあの人のために
どうしようもない僕の思い出の代わりに
もう少しだけ命を分けてあげたい
もう二度とは戻れない日々の中で
さよならの意味をしっているかい
もう二度とはやり直せないこの毎日に
だれも嘘なんかつけないんだよ
せめて今夜は一度
冷たい風に乗ってみたい