きがかりなのは母のこと
ドイツに行くにあたって一番気がかりなのが母のことです。
数年前のある日のこと、義姉から母のことで気になることがあると相談がありました。同じ市内で一人暮らしをしている母が認知症ではないかと言うんです。
実の娘からしたら正直あまり面白くない話だなと感じたのですが、同じマンションの隣の階段に住む兄一家の方が接している時間が長いので、ここは聞く耳を持つべきと判断しました。
電話やLINEのやり取りをしている時に会話のズレを感じることはあったものの、元々少し独りよがりな性格の人なので、あまり気にしていなかったのです。
短時間では分からないのかもしれないと思い、丸1日行動を共にすることにしました。意識して観察してみると、今まで老化だと思っていたことがなんだか気がかりなことに見えてくるわけです。
そんなことを何度か繰り返しているうちに決定的な出来事が起きました。
近くの大型スーパーで買いたいものがあるという母にお付き合いした日の帰り道。近道しようといつもと1本違う道を通った時に、急に不安な表情になりどこか分からなくなってしまったと言うのです。何十年も住んでいる町で知り尽くしている筈なのに、、、。
不安そうな母の顔を見て泣きそうになりましたが、その時は努めて平気なふりをして家に帰ることしかできませんでした。
その後は、数年間かけて状況が変化していき、本当に本当に様々なことがあり、今では看とりケアの段階まできてしまいました。わたしにできることは、お世話になっている施設に極力会いに行き、車椅子でお散歩に連れ出し、返事が返ってこないけれどひたすら話しかけることぐらい。
まだ話ができていたとしたら、間違いなく「ドイツ行きなさい」って言われていたでしょうね。そうさせてもらうね、お母さん。