何者でもないことがバレたくないから、
つまらない人間であることがバレたくないから、
見せかけの個性で蓋をして、
そこに膜を張って、
なんとか生きている人がいる。
しかし、
そうやって生きているうちに、
見せかけの個性という１枚の膜では、
不安になってくる。
見せかけの個性の裏に、
つまらない自分が透けて見えるなんてことは、
決してあってはならない。
だから、
その見せかけの個性という膜の上に、
さらにもう１枚、
『私はつまらない人間です』という
膜を張って生きる。
裏の裏は表である。
自分がつまらない人間であることを隠したくて、
膜を張っているのに、
結果つまらない人間と思われるのなら
同じじゃないかと
言う人もあるだろう。
けれど、
それで、
周囲の人から、
つまらない人間だと思われたとしても、
それは全然構わないのである。
最初は、
つまらない人間だと思われるのが嫌で、
見せかけの個性の膜を張っていたのに、
結局、つまらない人間だと思われることで安心するのは、
自分の核の部分を見られているわけではないと
自分に言い聞かせることができるから。
結局、
つまらない人間だと思われることが
耐えられないというよりも、
自分の核を見られて、
評価されることが
我慢ならないということなのだろう。
そうやって、
何重にも膜を張って、
自分を守って、
それでもやっぱり
どこまでいっても満足できなくて。
何のための膜なのか、
本当は膜なんて張りたくないのか。
そんなこともわからないまま、
膜を張り続ける。
いつかその膜が、
膜とは呼べないほどの厚みになって、
もともと隠そうとしていた自分もわからなくなるほどの、
石ころになることを望む人がいる。
そして、
何も考えないまま、
転がり続けることを望む人がいる。
Like a rolling stone.