ワインはアート⁈
ワインを語る切り口って、たくさんあるなーと思いつつ、最近よく考えるワインの本質についてのお話。
今回はワインをアートに例えて考えてみました。
それを絵と見るか、アートと見るか
個人的に美術が好きで、海外ステイとあらば、現地の美術館に足を運んでいました。
そう言うと、美術にあまり興味のない麿からは、「おもしろさがよく分からない」と言われるのですが…
そうそう、美術って全く知識がないと、人によってもしかしたら本来楽しめるはずの半分も楽しめないのではないかなーと思います。
例えばこちらのマーク・ロスコの絵画。
写真なので分かりにくいですが、絶妙な色合いの重なりとこのサイズ感が目の前に迫ってくると、何とも言えない感情を伴った没入感を覚えた印象があります。
もちろん、ロスコの絵は何の知識がなくとも楽しむことはできるのですが、これを初めて目にした方は正直、ただの「塗り絵」に見えるという方も多いのではないでしょうか。
しかし、この絵が生まれた背景にはその時代特有の社会情勢や変遷があったり、そこに生きたロスコという人間がいた訳です。
なので、目の前にある絵そのものを単体で捉えるより、そもそも絵画という創作活動がどのような軌跡を辿ってきて、この作品がどういう社会的背景で生まれたのかを知ると、もう少し楽しみ方が変わる気がします。
もっと言うと自分で絵を描いてしまうような人にとっては、どうやったらこのような絵が描けるのだろうと技術的に気になるのかもしれません。
もちろん、アート作品において「感性」はとても大事で、ロスコの絵も本質的にはそれを私たちに求めているのだと思います。
しかし、もう少し体系的な知識を持っている方がこの絵画がただの「絵」ではなく、人間や社会と深い関わりをもった「アート」だということが見えてくる気がします。
ワインも知らないより知っていた方が楽しい
ワインもアートと似ている所があると感じています。
絵画と同じで、 何の知識がなくても「このワイン好き」や「渋い」などを味覚で感じることができます。
しかし、そこに少しの知識(例えばブドウ品種の特性や地域による特性の違い)があれば、感性(味覚)をもっと磨くことができるし、ワインというただの飲み物をもっと体系的に楽しむことができると思います。
ワインを体系的に楽しむとは?
「体系的」という言葉が合っているかどうかは分からないのですが…
ここで言いたいのは、ワインはその味わいや種類が無数にある中で、目の前のワインが様々な座標の中のどの位置にあるのかを知ることが「また飲みたい」や「次は別のこれを飲んでみたい」に繋がり、それがただ飲み物を飲むという行為以上の「何か」になるということです。
「何か」というのは人間の知識欲だったり、記憶だったり、想像力だったりすると思います。
誤解のないように言っておくと、アートもワインも知識だけが重要と言いたい訳ではありません。(むしろ知識だけで楽しんでいると思っているのが一番怖い)「知識」というと学術的な難しいものを想像してしまうかもしれませんが、記憶や想像力を掻き立てるためのもっと本能的な学びだと捉えていただければ思います。
結論、アートもワインも感性の方が大切だと思いますが、そこに記憶や想像力があればもっと楽しいのではないか、というお話です。
共有する楽しさ
ロスコの絵の前で、何やら立ち止まって会話をしている方々を見かけました。
何となく二人の中で共通の知識があり、ただの散乱とした感想でなく焦点を合わせた会話をしているような気がします(本当のところは分からないですが)。
こうして見たままの感情を共有できるのも、アートの楽しみの一つなのではないでしょうか。
ワインもそうですよね!
私たちにロスコの絵は描けないし、私たちはウォーホルになれない
世の中にはもっと落書きっぽいアートもあって、中には「自分でも描けるのではないか」と思うものもあります。
でも、どんなに簡単に見えるものであっても、それを生み出す人たちにはきちんとした学術的バックグラウンドがあり、だからこそ何をどう表現するかが個性として彼らの作品に表れているのだと思います。
私がどんなにキャンベルスープ缶を上手に描いても、ウォーホールにはなれないという訳です。
ワインも一緒で、誰でもワインは造れるのかもしれない。
しかし、それがただのブドウから造られたアルコールとしてのワインなのか、もっと造り手が技術や自然に真剣に向き合って生まれた「ワイン」なのかは本質的に違う訳です。
私たちは後者の方を期待しているはず…
私の好きな美術館の一つが、ロンドンにあるテート・モダン。元発電所のため、この無機質で淡々としている感じがたまらないです。
私が行った時は確か無料で入れるところが多く、一部企画展のみ有料だった気がします。ロスコもウォーホールもダリの作品も、無料で見れた覚えがあります。
もう一つ好きな美術館が「ボストン美術館」。
とても大きいので、人が集中せずゆっくり見れました。22時までオープンしている日もあり、夜の美術館ってとても贅沢だなぁと今は思います。