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日本初の「シェアする」ワイナリーとは

皆さまこんにちは、MARO Wines広報担当Cです。

普段は自分たちのブランドMARO Winesについての発信が多いのですが、今回はそもそもMARO Winesがワインを醸造している場所である、2023年に完成した"Hokkaido SPACE Winery"(北海道長沼町)について、お話したいと思います。

なぜ「マロワイナリー」でないのか?


私たちはMARO Winesというワインブランドを持っており、自分たちのワイナリーを持っています。
しかし、ワイナリー名は「マロワイナリー」ではなく、「Hokkaido SPACE Winery」です。

というのも、Hokkaido SPACE Wineryは醸造設備を複数の生産者で共有して使うことができる、日本初の「シェアワイナリー」という役割をもっており、敢えて「ワインブランド名」=「ワイナリー名」にしていません。

一つのワインブランドに対して一つのワイナリーというのが一般的なので、おのずとワインブランド名とワイナリー名が一致するのが普通ですが、Hokkaido SPACE Wineryは複数の違う生産者が集まってワインを造るという特性故、特定の生産者の色がついていない名前になっています。

SPACEには「空間」「余白」「宇宙(そら)」といった意味が。

なぜシェアワイナリーを建てたのか?

Hokkaido SPACE Wineryは先にお伝えしたように、複数の生産者が集まって同じ場所で、それぞれのワインを造っています。

そこで、そもそも麿(まろ)は何故、MARO Winesとして自分だけのワイナリーとせずに、「わざわざ」シェアワイナリーを建てたのでしょうか?

自分だけが使うことを考えれば、導入する醸造設備も建屋自体も、実はもっと金銭的なリスクなく建てることができました。しかし、麿は敢えて複数の生産者が使うことを考え、シェアワイナリーを建てることを決めました。

その理由を、ワイン造りの実情をご説明しながらお伝えしたいと思います。

ワイン造りの新規参入にかかるコストの実情

ワイン造りかかるコストと言っても、生産者によって生産本数や造るワインの種類、こだわりによって大きな差があります。

あくまで一例ではありますが、具体的な金額については以下のページで説明しております。

ここで一つお伝えしておきたいのは、決して「安い初期投資で出来れば良い」という訳ではないということです。

美味しいワイン造りにおいて「良質なブドウ」というのはよく言われることですが、それと同じく、醸造家の醸造技術適切な設備導入というも非常に大切なことです。
必要最低限の設備でワインは「造る」ことはできますが、ワインはあくまで口に入る飲み物である以上、適切な機器を揃えているということがそれを実際に使いたいか使いたくないかは別にして、重要だと考えています。

そう考えると建物の設備や醸造機器を揃えるだけで数千万円かかるというのが一般的であり、個人でワイン造りを始める生産者にとってはそれなりのリスクが伴います。

一台数百万する機器たちと空調設備が必要

そこで麿は、醸造設備を複数の生産者で共有するということで、まだ自分たちのブランドが確立していない新規参入者の初期投資おけるリスクを減らそうということを考えました。

実はその発想は、麿が研修に行った海外のワイン大国で目にした光景からきています。海外では、例えば一つの瓶詰め機が各ワイナリーを回るということがあります。

ワイン造りの現場は常に機械が稼働している工場のイメージとは異なり、瓶詰め機以外にも、いち生産者が実際に一つの機械を使うのは数時間〜長くても半日間
そう考えると複数の生産者が機械を共有するというのはとても理にかなっていることなのです。

それを麿は一つの機械だけでなく、そもそも醸造設備全てをシェアすることで、ワイン造りを始める際の初期投資を軽減しようと考えたのです。

よって、Hokkaido SPACE Wineryを使う生産者は最初の数年をリスクなくワイン造りをすることができ、その間に資金を貯めたり自分たちのブランドを確立したりしながら、軌道に乗ったタイミングで自分たちのワイナリーを建てることができます。

ワインを造るにおいて、「資金」よりも大切なこと

ここまで、シェアワイナリーの意義として金銭的な面からお話してきましたが、実はもっと大切なことがあります。

それは、ワイン造りにおける「知識と経験の集積地をつくる」ということです。

今や各地で大規模な日本ワインイベントが開催され、どこも多くの人で賑わうほど盛り上がりを見せている日本ワイン。生産者の数も増え続け、北海道だけで見てもワイナリー数は60以上と10年前に比べて約3倍も増えているそうです。

しかし、その中で本当に美味しいワインはどれだけあるのか?そして今後それだけのワイナリーが生き残ることができるのか?という疑問があります。

新規参入するワイン生産者はほとんどの場合ワイン造り未経験という場合も多く、正直、オフフレーバーが出ているような欠陥ワインも見受けられます。

どれだけ生産者が多くてもワインの品質とブランディングで自分たちのブランドをポジショニング出来れば良いですが、そうでないと今後、日本で生き残っていくのは厳しいと感じます(自分たちへの戒めを含め、そう感じます)。

そこで造り手みんながブドウ栽培やワイン醸造に関わる何らかのスクールに通い、実際にどこかの造り手の元でワイン造りを学ぶ経験を積むことが出来れば良いですが、新規参入する方々全員にそれを求めるのは難しいことでしょう。(日本の場合、新規でワイン造りを始める方は、異業種からの参入でワイン醸造未経験な場合が多い)ましてや醸造は一年に一回しかなく、十分な数をこなそうと思うとそれだけ時間もかかることになります。

そこで麿が考えたのが、Hokkaido SPACE Wineryに生産者が集まり、実際に仕込みをしながら活発なコミュニケーションをとることで「知識と経験の集積地」をつくるということです。
また、日本よりも遥かにワイン文化が発展している海外からも造り手を招くことで、日本にいながらにして世界スタンダードのワイン醸造を学べる場をつくろうと考えたのです。

(右)NZで活躍する日本人醸造家・小山竜宇さん
(中央)世界中にファンをもつワインブランドHermit Ramの造り手Theo Coles氏

これは麿自身、未経験からワイン造りを始めた中で、国内外たくさんの造り手に助けられたという思いがあるからこそ、そもそもその環境を皆が享受できる場をつくろうと考えたのです。

「設備や知識を共有することで同じようなワインができるでは」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、麿の中には常に、「生産者が違えば絶対に同じワインを造れない」という思いがあるので、むしろ知識をオープンにすることで「日本ワイン」全体の品質が向上することを望んでいます。

予想以上に良かったこと

シェアワイナリーをいざ始めると、実際の需要は大変多く、本格的に募集を始めた今年は7生産者がHokkaido SPACE Wineryでワインを造ることになります。

昨年からの実際の運用を見ていると、予想以上に良かったなと思うことがたくさんあります。

1. 時間の効率化

まず、シェアワイナリーとして複数の生産者が集まり、仕込み時期に人がたくさんいることで、機械の洗浄や片付けを効率的に行えることが出来ています。

企業として参入し、人を十分に雇えているところは別として、個人で始める方々は大体1〜2名でワイン造りの現場を管理しているところが多いです。

MARO Winesも、代表の麿と私の二人で運営をしており、醸造に関しては私は「全く(笑)」携わっていないので、実質麿は一人でワイン造りをしています。

そうなると機械の洗浄一つとっても、何人か集まっていた方が、お互い助け合いながら効率的に行うことが出来ます。

2. ワイン造りは楽しいのが一番

あと、シェアワイナリーをやっていて良かったと感じるのは、「ただただ楽しい」ということです。
やはり、自分たちのワイン造りだけでなく、他の生産者のワイン造りを見たり、想いや考えを聞いたりすることが刺激になることが多くあります。

自分たちの信念をもつことは大事ですが、それが気づかないうちにただの「頑固」や「偏見」に繋がっていることというのは、ワイン造りに限らずある気がしています。

それが常に他者がいることで「こういう考え方もある」とオープンな気持ちでいることができ、色んな考えがあるからこそワイン造りは魅力的だと一層思うことができる気がしています。

あとは、忙しい醸造時期の中を皆で声をかけ合いながら乗り越えられるのは、また一味違った達成感があります。

一つのワイナリーで色んな生産者のワインが飲める…?

Hokkaido SPACE Wineryの醸造施設である1階は共有スペースとなっておりますが、2階部分に関しては、MARO Winesのセラードア(ワイン直売所)となっています。

長沼町の美しい田園風景とブドウ畑が見渡せるスペースになっています。

こちらではMARO Winesのワインをグラスで楽しんだり気に入ったワインを購入したりできるようにしたいと考えていますが、せっかくなので将来的には他の生産者のワインも扱えたらおもしろいと考えています。

オープンした際は、ぜひ、これを読んでいる皆さまにも遊びに来ていただけると嬉しいです。

新千歳空港から車で約20分。道内外から「人が集まりやすい」ということも意識して選んだ土地です。

Hokkaido SPACE Winery ウェブサイト

MARO WinesもHokkaido SPACE Wineryに入居する、いちワインブランド


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