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イメージと感情によって人は冷静な判断力を失う『ルース・エドガー』

【基本情報】

⠀ 原題:Luce
製作年:2019年
製作国:アメリカ
⠀ 配給:キノフィルムズ、東京テアトル

【個人的順位】

鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:40/62
⠀ 疑念🤔:★★★★☆
スリル😱:★★★☆☆
⠀ 恐怖😵:★★★☆☆

【ストーリー】

文武両道な優等生の黒人青年ルース・エドガー(ケルヴィン・ハリソン・Jr)は、幼い頃に戦地だった母国から、白人夫婦のピーター(ティム・ロス)とエイミー(ナオミ・ワッツ)に引き取られ、愛情たっぷりに育てられてきました。

ある日、高校の課題で彼のレポートを見たウィルソン先生(オクタヴィア・スペンサー)は、その内容から彼の思想が危ないんじゃないかと感じ、疑惑の目を向けることで2人の関係が悪化していき、まわりの人間も巻き込んで大きな事件に発展していくという流れです。

【感想】

「人間が持つイメージの怖さ」が前面に出ている内容で、“社会ミステリー”と呼ぶべき映画だと思いましたね。いや、見方によってはホラーかもしれません(笑)

メインはルースとウィルソンの対立になるのですが、とにかくウィルソンはレポートの件があってからルースのことを一切信用しません。危険な花火の持ち込みもルースの仕業と決めつけ、完全に危険視しています。

ルースはルースで身の潔白を主張するので、もはやこの2人の話は平行線。観ているこっちは2人とも疑惑の目でしか見れません。

現実の世界でもそうですが、こうやってお互い一度レッテルを貼ってしまうとなかなか拭えませんよね。何かあるたびに、「こいつがやったに違いない!」って。物的証拠もないのに、感情論だけで決めつけてしまいます。

まあ、僕自身も経験はあるのですごくよくわかりますし、みんなも少なからずあるでしょう。結局、ルースの両親でさえ、息子に疑いの目を向けてしまうし、それがきっかけで夫婦間の関係もギクシャクしてくるのですが、それがこの映画の怖いところです。イメージと感情によって、冷静な判断ができなくなるのですから。

さらに、この映画で印象的なのは、いくつか事件がある中で、ルースが関与しているのは間違いないはずなのに、まったくもって決定的な証拠がないところなんですよ。しかも、ミステリー映画でよくあるような、怪しいと思わせたい人物にフォーカスしたカメラワークもなければ、最後に誰かが全部説明してくれるってのもなかったです。

そう、結局すべては闇の中なんですよ。だから、モヤモヤしたままっていう(笑)とはいえ、映画としてはイメージだけで決めつけてしまう人の怖さなどを伝えたかったと思うので、誰が犯人かってのはあまり問題なかったのかもしれません。

あと、出ているキャスト全員、演技がうまいのがこの映画のよさなんですよ。中でもウィルソンの妹役を演じたマーシャ・ステファニー・ブレイクの狂気全開のシーンは圧巻です!モザイクなしの体当たり演技!『ミッドサマー』の例の儀式に勝るとも劣らない異常性!(もともと病気持ちという設定ではあるんですが)。

あのアジア人の女の子も怖かったな。。。黒目全開で。。。なんか、ところどころホラー感出してくるのが、ホラー嫌いとしてはちょっと辛いです。。。(笑)

映画の雰囲気としては、あんまり大衆娯楽向きの映画ではないので、はっきり言って好みは分かれると思います。僕も好き嫌いで言ったら、そこまで好みな方ではないんですが、後半から面白さが加速してくるので、よかったら観てみてください。


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