知られざる兵士たちの生活を描いた『彼らは生きていた』

鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:4/20
衝撃😫:★★★★☆
惨さ😣:★★★★☆
辛み😣:★★★★☆
悲哀😢:★★★★☆

これはすごい映画です。。。
ドキュメンタリーなので、単純に他の映画と比較はしづらいけれど、それでもこの映画の製作背景を知ると、開いた口が塞がらないし、とても社会的意義のある映画だと思いました。もはや、面白いか面白くないかではなく、人としてこの歴史的事実は知っておきたいです。

第一次世界大戦が終わって100周年を記念して作られたこの映画、とてつもない手間がかかってるんですよね。だって、2200時間以上にも及ぶ白黒のサイレント映像が大元の資料なんですよ。
これをね、ごみやノイズを取り払って、コマ数を現代の毎秒24コマに統一し、膨大なリサーチのもと着色処理を実施し、足音や爆撃音などを追加して、兵士たちの言葉もね、読唇術のプロの協力を仰いで何を話しているのか検証した後、その兵士と同じ出身地の役者を雇って声を当てるという、もう気が遠くなるような作業です(細かく製作過程を知りたい方は以下をご覧ください)。

そこで語れる第一次世界大戦の兵士たちの様子は、決して教科書ではわからないことだらけでした。

兵士の募集要項では年齢は19歳~35歳とあるのに、実際に応募したのは19歳にも満たない子が多かったそう。
彼らは辛い訓練を乗り越えた後、交代制で第一線に送られます。

そこはまさに地獄絵図で、仲間と話していたら頭が吹っ飛ぶなどはめずらしいことではなく、手足がもげたり、腸や肺がむき出しになることもザラ。死体は放置。そこに群がるウジ虫やネズミ。想像しただけでおぞましいです。

ただ、我々はもう想像しかできないんですよね。いや、いくら想像してもしきれないでしょう。インタビュー音声でも、「いくら想像したところで、いつ死ぬかわからない緊張感だけは絶対に理解できん」と言ってましたから。。。

あと、個人的に意外だったのは、平和な時間もちょこちょこあったということです。そりゃ戦闘行為が激しいときは戦わなくてはなりませんが、それ以外は普通に仲間としゃべったりふざけ合ったりと、不謹慎ですが楽しそうな時間でした。実際にインタビューでも「キャンプに来たようだ」と言っていましたし。

捕虜の扱いにも驚きです。
この映画はイギリス側の視点のみで動いていきますが、ドイツ兵を捕まえたとき、さぞ辛い拷問にかけるかと思いきや、「ドイツ兵は友好的でしっかりしていた」という声にもあった通り、イギリス兵と談話している様子も映し出されていました。そこで、お互いに「こんな戦争無意味だよね」と話していたそうで。。。

ああ、これは辛かったです。。。現場では、誰も憎しみ合ってなんかいなかったんです。じゃあ何で戦っていたのか。「そう命令されたから」、ただそれだけなんですよね。軍服を脱いだらみんな販売員や理容師、ただの一般人です。兵士同士は、敵国と言えども互いに憎み合うことなく、割と穏やかに仲良くやっていました。。。

でも、一番辛かったのは、終戦後の話。
就職先がなかったようです。兵士たちの。
国のために命がけで戦ったのに、誰も感謝せず、むしろ「元兵士お断り」というスタンスで、働き口に相当苦労したとか。。。

「事実は小説よりも奇なり」という言葉がありますが、この映画を観て、初めて戦地にいる兵士たちの実情を知りました。もちろん、フィクション以上に惨い部分もありましたが、それだけでなく、穏やかに笑い合う姿もあって、後世に伝えられることって本当に一部でしかないんだなと思いました。

日本にも戦時中の記録はいっぱいあると思うので、こうやって復元していろいろ観れたらいいなと思います。

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