今年一番のバッドエンド『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』
【基本情報】
原題:Mr.Jones
製作年:2019年
製作国:ポーランド・イギリス・ウクライナ合作
配給:ハピネット
【個人的順位】
鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:76/121
ストーリー:★★★★☆
キャラクター:★★★☆☆
映像:★★★☆☆
音楽:★★★☆☆
【あらすじ】
ヒトラーに取材した経験を持つ英国人記者ガレス・ジョーンズ(ジェームズ・ノートン)はある大きな疑問を持っていた。世界恐慌の真っ只中なのに、なぜスターリンが統治するソビエト連邦だけが繁栄しているのか。
その謎を解くために単身モスクワを訪れたジョーンズは、外国人記者を監視する当局の目をかいくぐり、答えが隠されているというウクライナへと向かう。
寒さに覆われたウクライナでジョーンズが目の当たりにしたのは、想像を絶する悪夢のような光景だった。
【感想】
これは映画そのもののが面白いというよりも、歴史的事実として目を向けるべき内容だと思いました。国家の闇であり、今年観た映画の中で一番のバッドエンド。歴史的な映画に興味がある人は観てみるとよいと思います。
僕は受験のとき(もうだいぶ前ですがw)に日本史専攻だったということもあってか世界史には疎くてですね、、、恥ずかしながら、この史実を初めて知りました。
"ホロドモール"と呼ばれるウクライナ人が住む地域で起きた人工的な大飢饉は、「アルメニア人虐殺、ホロコースト、ポル・ポト派による虐殺、ルワンダ虐殺等と並んで20世紀の最大の悲劇の一つ」(ウィキペディアより)と言われているようです。
画像検索すると、かなりショッキングですよ。。。
作中ではこの飢饉自体についてはそこまで詳細には語られていないので、ざっとまとめてみました。
ソ連にとってウクライナから収穫される小麦は貴重な財源であり、とにかくたくさん作らせていたようです。ウクライナって肥沃な土地らしいのですが、それでも達成が困難なほどのノルマを課せられ、凶作により生産量が減少しても変わらなかったそうです。
だから、ウクライナに住む人々にとっては自分たちが食べるものもなくなってしまい、木の皮や人間の死体まで口にする始末。通りには死体が転がり、所々山積みにされ、死臭も漂っていたようなんです。
そんな状況にも関わらず、ソ連は一向に飢饉の事実を認めようとしなかったんですね。五カ年計画を遂行していく中でそんなことが明るみになったら、世界に対して国家としての面目を保てなくなるからです。完全に外交上の見栄ですね。
ウクライナに潜り込んだジョーンズは散々な目に遭うものの、最終的にはこの事実を世間に公表するんですが、ソ連がそれをを認めたのは1980年代になってからのこと。。。実に50年以上も後のことなんですよ。。。
詳細を知りたい方はこちらを見てみてください。
そして、ジョーンズ自身は別の取材で満州を訪れた際に悲劇に見舞われることになるんです。正義が悉く握りつぶされ、悪が勝つとはこういうことを言うんだなと思いました。
この映画を観て改めて思ったのは、誰かの平和は誰かの犠牲の上に成り立っているんだということです。当時、モスクワの人たちが変わらぬ生活を送れた裏にはこんな事実があったということを知っていた人はどれぐらいいたんでしょうかね。
しかし、人あっての国家なのに、外交的な面目を保つために多くの人の命を奪ったこの大飢饉、主導したスターリンの罪は大きいと思います。学説によって違いはありますが、犠牲者の数は250万~1450万人とか。
個人的には、そんなことをしてしまうスターリンってどんな人物なのかっても気になります。ウィキペディアしか見ていませんが、どうやら貧困層の出身で、低身長や幼い頃の病気やケガによる見た目へのコンプレックスなど、とにかく劣等感が強かったそう。それゆえに権力欲、顕示欲が凄まじかったらしいです。
さらに、人間不信で残忍な性格というまさに悪の帝王感ありますが、外部からの訪問者に対しては謙虚で他人を持ち上げるなど好感を持たれることもあったそう。ますます、掴めない人物ですね。。。(笑)
なお、今生きている彼の孫娘がまさかのクリス・エヴァンスという名前なのには驚きました(マーベルのあの人じゃないですよw)