同じ人物でも立場によって見え方が180度変わる『ミセス・ノイズィ』
【基本情報】
製作年:2019年
製作国:日本
配給:ヒコーキ・フィルムズインターナショナル
【個人的順位】
鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:26/201
ストーリー:★★★★★
キャラクター:★★★★☆
映像:★★★☆☆
音楽:★★★☆☆
【あらすじ】
小説家であり、母親でもある主人公・吉岡真紀(篠原ゆき子)。スランプ中の彼女の前に、ある日突如立ちはだかったのは、隣の住人・若田美和子(大高洋子)。
毎朝鳴り響く布団叩きの騒音や娘への絡みなど、真紀のストレスは溜まる一方。執筆は一向に進まず、おかげで家族ともギクシャクし、心の平穏を奪われていく。
そんな日々が続く中、真紀は美和子を小説のネタに書くことで反撃に出る。だが、それが予想外の事態を巻き起こしてしまう。
2人のケンカは日増しに激しくなり、家族や世間を巻き込んでいき、
やがてマスコミを騒がす大事件へと発展。
果たして、この不条理なバトルに決着はつくのだろうか。
【感想】
元ネタは2005年に話題になった「奈良騒音傷害事件」。そう、いわゆる“騒音おばさん”の事件ですね。おばさんが布団を叩きながら、「引っ越し!引っ越し!」と叫んでたやつなので、覚えている人も多いのでは。
それに着想を得たのが今作なんですけど、これがすごく面白かったんですよ。
一見すると、小説家である真紀が、隣のおばさんの騒音に苛まれて一方的な被害者のように見えるんです。
が!
実はおばさん側にもいたたまれない事情があったんです。そして、その設定が本作の最も面白いところでもあります。
特に秀逸だなと感じたのが、これまで真紀側の視点で描かれていたものを、もう一度おばさん側で映すんですが、相手側の演技がガラリと変わるところです。
真紀側の視点のときは、自分があたかも普通で、おばさんが嫌な人のような演技になっているんですが、おばさん側の視点のときは、おばさんの口調は優しく、むしろ真紀がヒステリックに見えるような演技になっているんですよ。
最初はおばさん側に対して、「ああ、こういう人がいるとめんどくさいよな」って感じるんですけど、ひとたびおばさん側の事情を知ると、ものすごく同情してしまい、むしろ真紀に対して物申したくなるんですよね。同じ人物なのに、立つ視点を変えることでここまで印象が変わるとは思いませんでしたね。自分では普通にしているつもりでも、相手の主観を通すとこう映ることもあるっていう、ある種の神の目的な感覚を味わえました。
そして、この2人のやりとりが動画サイトにアップされたことで、事態は思わぬ方向へ進んでいくという展開も現代風でリアルなのもよかったですね。もっと大型シネコンで流してもいいと思うぐらいには面白い映画です。
そして、この映画を観て思うのが、誰かと対立するときには、まず相手を知った方がいいなということです。“健全な”ケンカや揉めごとというのは、本来はお互いに正義があるから起こるものであって、どちらの言い分も正しいことの方が多いのかもしれません。
あえて他人を知ろうとしないと、判断基準が自分の思い込みになる上に、誰でも自分が一番かわいいから、自分に都合のいい解釈になりがちですよね。
その結果、今回のように大きな事件へと発展しかねないから、やはり誰かと対立しそうなときは、まずは話し合って相手を知ることが大切だなと感じます。
ただ、それが一番難しいんですよね(笑)感情的にそこまでしたくないと思うことの方が多いでしょうし、あえて他人を知ることのめんどくささもありますし。そのための警察や弁護士だとは思いますけど。
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