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人間とは何かを考えさせられる『人数の町』
【基本情報】
製作年:2020年
製作国:日本
配給:キノフィルムズ
【個人的順位】
鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:91/127
ストーリー:★★★☆☆
キャラクター:★★★☆☆
映像:★★★☆☆
音楽:★★★☆☆
【あらすじ】
借金取りに追われて暴行を受けていた蒼山哲也(中村倫也)は、黄色いツナギをポールと名乗る男(山中聡)に助けられる。蒼山のことを"デュード"と呼ぶポールは、蒼山に「居場所を用意してやる」と言い、奇妙な「町」に連れて行く。
「町」の住人はツナギを着た"チューター"たちに管理され、簡単な労働と引き換えに衣食住が保証され、セックスまでもが推奨されている。住民たちは何の疑いもなく、何も深く考えずにそれらの労働を受け入れ、奇妙な「町」での時間は過ぎていく。
ある日、蒼山は新しい住人の紅子(石橋静河)と出会う。彼女は行方不明になった妹をこの町に探しに来たのだという。思い詰めた様子の彼女を蒼山は気にかけるが、この出会いが蒼山をある行動に駆り立てる。
【感想】
『世にも奇妙な物語』にありそうな映画でした。
この"人数の町"(作中ではそうは呼ばれず、単に"町"って言われてますが)は不思議なところで、簡単な作業さえしていれば衣食住に困ることはなく、プールもついてるんですよ。
各人に割り振られた部屋も、最低限と呼ぶにはやや贅沢なレベルで、アパホテルのシングルよりは広く、殺風景だけど家具は一通り揃っている様子。
家族というものは意味を成さないため、基本的にひとりでの生活になりますが、セックスは精神衛生上推奨されており、部屋の番号を書いた紙をヤリたい人に渡すだけでOKという手軽さ。もちろんそれで部屋に来てくれるかは別ですが、変に口説いたり懇願したりといったような無駄なやり取りは必要ないのは楽だなと思います(笑)
ただし、逃れることができないんですよ、この町から。もし逃れようとすると、この町に来たときに後頭部に埋め込まれた何かが反応して、頭痛を引き起こす謎の音楽を流す仕組みになっているんですよ。これがかなり痛いらしく、ほとんどの人がそれに耐え切れず、元の場所に戻るぐらいです。
さて、この環境をどう思いますか?簡単な作業で衣食住が保証され、セックスも推奨。ある意味、恵まれてはいますよね。誰も傷つかないし、安全ですよ。でも、ここに来る連中は、借金で首がまわらなくなった人や、殺人を犯した人など、外の世界に居場所がない人たちばかり。そんな人たちからしたら、いくら限られた空間に閉じ込められているとはいえ、安全が保証されたこの場所はまさに自由を謳歌できる天国に映るかもしれません。
僕だったら、、、たまに行くにはいいかもしれませんが、一生住み続けるのは無理ですね。できることは限られているから刺激は少ないし、何よりも人が人でなくなる気がしてなりません。みんな楽しんでいるように見えますが、多分すぐに飽きる気がします。なんかここにいる人たちはみんな記号のように見えて、あまり生気を感じることもできないんですよね。いずれ気が狂う人とか出てきそうです。
外の世界で生きていくことができない人からしたら、この場所もいいかもしれませんが、普通に暮らしている人たちにとってはあまりいい場所でないかもしれません。なので、改めて人間とは何か、自分が何に喜びを感じるかなど考えるきっかけになる気がしました。
ラストは大方予想はついたけれど、一度連れて来られてしまったら、もうそれしか選択肢がなさそうなのが辛いです。本人がそれでよいのであれば、問題ないんですけどね。