映画の歴史にロマンを感じる『カツベン!』
2019年公開映画211本中94位。
映画が好きな人は好きそうな映画です。
映画の歴史を垣間見ることができるからね。
舞台は今から100年前、大正時代の日本。
まだ映画が活動写真と呼ばれ、音がなかった頃。
映画の内容を解説する専任の解説者として、
「活動弁士」なる人たちがいたのです。
本作は、そんな“活弁(かつべん)”を扱った映画。
主人公は、幼い頃から活動弁士になることを夢見ていた
染谷俊太郎(成田凌)。
ニセ弁士として泥棒一味に加担していたんだけど、
嫌気がさして抜け出し、とある小さな映画館に流れ着き、
住み込みで働くことに。
そこで、ようやく本物の活動弁士になれると
夢と希望に満ち溢れていたものの、
かつての泥棒一味や警察に追われたり、
ライバルの映画館に嫌がらせされたり、
幼い頃に恋をしていた女性と再会したりと、
てんやわんやな日々が続きます。
よく映画であるような、夢に向かって突き進んだり、
夢と現実の間で葛藤したりという内容ではなく、
活弁の日常をコメディタッチに描いた作品ではあるんだけど、
常に何かしら事件が起こるノンストップな展開で、
テンポよく進むから全然飽きないし面白い!
今でこそ活動弁士なんてほとんど見ないけれど、
かつてはそういった人たちがいて、
サイレント映画を盛り上げて、
観客に夢を与えていたんだなと思うとロマンを感じます。
さらに、感慨深いことに、実在した2人の監督が出ているんだよね!
ひとりは、山本耕史が演じた牧野省三。
「日本映画の父」と呼ばれた人で、津川雅彦のおじいちゃん。
もうひとりは、池松壮亮が演じた二川文太郎。
日本映画の黎明期を支えた人で、
エンドクレジットでは彼が監督した無声映画史上傑作と言われている
『雄呂血』が流れてました。
(なお、その映画の主演である阪東妻三郎は田村正和のお父さん)
テーマがテーマだけに、観客の年齢層は高めだけど、
古き良き日本の牧歌的な雰囲気が温かくて、
とても穏やかな気持ちになれる映画でした。