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あんなゴミみたいに酔っ払っても神々しさを保つマッツ様が崇高だった『アナザーラウンド』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:61/183
   ストーリー:★★★★☆
  キャラクター:★★★★★
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★☆☆

【以下の要素が気になれば観てもいいかも】

ヒューマンドラマ
飲酒
酔っ払い

【あらすじ】

冴えない高校教師のマーティン(マッツ・ミケルセン)と3人の同僚は、ノルウェー人の哲学者が提唱した「血中アルコール濃度を一定に保つと仕事の効率がよくなり想像力がみなぎる」という理論を証明するため、実験をすることに。

朝から酒を飲み続け、常に酔った状態を保つと授業も楽しくなり、生き生きとするマーティンたち。生徒たちとの関係も良好になり、人生は良い方向に向かっていくと思われた。

しかし、実験が進むにつれて次第に制御がきかなくなり……。

【感想】

てっきり、酔って暴れるコメディかと思いきや、意外にも真面目なヒューマンドラマでした。もちろん、笑えるシーンもあるんですが、ちょっと予告から受ける印象とは違ったかな(笑)ただ、酒飲みや酔っ払うのが好きな人には向いてる映画だと思います。

<体を張った実験の面白さ>

血中アルコール濃度を0.05%に保つことで、仕事や日常生活にどう影響が出るかを実験する4人のおっさんたち。飲酒は勤務中のみと決めたため、水筒にお酒を入れて、職場である高校でも常に飲み続けます。理性がゆるみ、気も大きくなり、人とコミュニケーションも取りやすくなるのは、酔っ払ったときのメリットですね。その結果、保護者からも歴史の授業のつまらなさを指摘されていたマーティンのやり方は大きく変わり、生徒の評判もうなぎ登りです。ちなみに、僕も若いときに同じことを考えて、ちょっとお酒を入れて仕事をしたことがありましたが、、、苦手な人とも難なくコミュニケーションが取れる反面、翌日話したことをすべて忘れるという状況に陥ったので、それ以降やってません(笑)

<うまくいくと調子に乗り出すのが人間>

0.05%の仮説はどうやらうまくいきそうだと過信したマーティンたちは、次のステージへと進みます。0.05%とはいえ、反応は人によってまちまち。ならば、「本人が適量と思う濃度」まで引き上げるんですよ。ここからがこの映画の本番です(笑)

以前にも増して、酒の量やアルコール度数が増えますよね。すると、どうなるか。もうただの酔っ払いですよ。バーで騒ぎ、街を走りまわります。マーティンなんか、気がつけば道端で頭から血を出して寝ていましたからね(笑)

<酔っ払ったデメリットも描く潔さ>

そこまで酔っ払ってしまうと家族にも迷惑がかかります。そして、つい口に出てしまった本音。マーティン夫婦はそれまであまり仲がよくなかったんですよね。で、0.05%のときにそれを解消したかに思えたんですが、酔っ払いが度を越したせいで再び妻との仲も悪くなってしまいます。酔っ払うことっていいことばかりではないんですよね。

とはいえ、「ええい、ままよ!」と最後には濃度の上限を撤廃し、酔っ払いの限界に挑戦。もう歩行すらままならず、お店では商品にぶつかり、釣りをしても海に落ちる始末。手がつけられません。

<酔っ払うことの是非を問う>

数々の酔っ払いあるあるは、お酒を飲んだことがある人なら誰しもが共感できる内容で笑えるものだと思います。しかし、そんなおふざけでは終わらないのがこの映画のいいところですね。マーティンだけでなく、他のメンバーも家族や生徒と向き合う真面目なシーンがあります。そこにはいいこともあれば、悪いこともあり、酔っ払うことで生じるメリットとデメリットをうまく取り入れた映画だなと思いました。

僕はお酒はあまり好きではないのですが、酔っ払った状態は好きで、過去には、飲み会などではけっこう飲みすぎてしまうこともありました。話しづらい人にも絡めたり、普段話さないような話題にも入れる点においては有用だとは思います。幸い、僕自身も含めて、まわりでもお酒の大きな失敗はありませんが、それで事件や事故を起こしている人がいることを考えると、お酒との付き合い方を改めて考えさせられる映画でもあるなと感じます。

<マッツ・ミケルセンの崇高な魅力>

それにしてもこの映画、注目すべきはやっぱりマーティンを演じたマッツ・ミケルセンでしょう。あんなに酔って、ゴミのようになりながらも、美しすぎる出で立ちですから。こんなに綺麗に酔う男がいるのかと。ラストで彼が踊り狂うシーンは最高でした。元ダンサーというだけあて、55歳とは思えぬキレのある動き。これはぜひ映画館で観ていただきたいです。

<その他>

ちなみに、デンマークって16歳からお酒買えるんですよね。高校生たちの騒ぎっぷりがメチャクチャで。それがこの映画の冒頭と最後で流れるんですよ。冒頭では、湖レースっていうゲームをプレイしています。詳しいルールはわかりませんが、チームの誰かが湖を1周する間に、他のメンバーはビールケースを空けます。とにかくハイペースに飲みまくることになるので、みんなゲロ吐きまくり(笑)最後は、卒業式だかなんだかで、街中でビールかけみたいなの始めちゃって。これがすごく楽しそうなんですよ。久しぶりにパーッてお酒を飲みたくなる映画でしたね、これは。


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