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"永遠の今日"を生きる男女のラブコメ『パーム・スプリングス』

【個人的な評価】

2021年日本公開映画で面白かった順位:10/67
   ストーリー:★★★★★
  キャラクター:★★★★★
      映像:★★★☆☆
      音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★★★☆

【以下の要素が気になれば観てもいいかも】

ラブコメ
タイムループ
下ネタ

【あらすじ】

舞台は砂漠のリゾート地、パーム・スプリングス。妹の結婚式で幸せムードに馴染めずにいたサラ(クリスティン・ミリオティ)は、一見お調子者だがすべてを見通したようなナイルズ(アンディ・サムバーグ)に興味を抱く。

いい雰囲気になる2人だが、謎の老人ロイ(J・K・シモンズ)が突如ナイルズを襲撃!負傷したナイルズは近くの奇妙な洞窟へ逃げ込んでいく。

ナイルズの制止を聞かずサラも洞窟に入ってしまったからさあ大変!一度眠りに落ちると結婚式の日の朝にリセットされる"タイムループ"に閉じ込められてしまったのだ!

しかも、ナイルズはすでにループにハマっていて、数え切れないほど同じ日を繰り返しているという。2人で過ごす無限の今日は最高に楽しいものに思えたが、明日が来ない日々は本当に大切なものを気づかせていく。

果たして2人は、永遠に続く時間の迷宮から抜け出し、未来をつかむことができるのか!?

【感想】

こんなバカンスをのほほんと楽しんでるようなポスターからじゃ想像できませんが、まさかのタイムループモノです。しかも、Huluオリジナル映画。

これがね、面白いんですよ。タイムループにハマった永遠の今日を過ごす男女を、下ネタと笑いで包み込むポップなストーリー展開がおかしくて、新しい切り口のラブコメだなーって思いました。ジャンルとしては散々使い古されてきたタイムループものですが、まだまだ面白くできる余地ってあるんだなって。

眠ったら(死んだら)リセットされちゃうんで、その日やったことが全部なかったことになるんですよ。そういう状況になったら、人はどうするかっていうのが垣間見えるのも面白いんですけど、これ、自分だったらどうするかなーって考えちゃいますよね。みんなだったら、どうするかな?どうせリセットされちゃうなら、普段やらないようなことしたくなりますよね。

タイムループにハマることのメリットは、人生のABテストができるところだと思います。いきなりあの子を口説いたら?合コンでいつもと違うキャラで行ったら?普段着ないファッションで街に出かけたら?それによって、思いがけない幸福が訪れるかもしれないし、ドン引きされて終わりかもしれない。何が一番いいのかを同じ人・同じシチュエーションで試すことができるって夢ですよね。結局、そういう冒険をしないのって、「その後どうなるかわからないから(むしろ、悪い結果になると思うから)」ですよね。だから、どうせリセットされるのであれば、どんどんチャレンジしたくなるんじゃないでしょーか。

とはいえ、唯一のデメリットが、次に一切つなげられないことなんですけどね。何をやってもリセットされるから、すべてが無意味っていう(笑)

そういうのを散々繰り返した上で、穏やかに過ごせる今日から出ようとしないのがナイルズなんですよ。彼はもう大体のことやりましたから。無意味だけれど、自由気ままに暮らせる「現状維持」を望むのが彼です。そんな今日の居心地のよさに一度は身を預けたものの、仮に絶望があったとしても明日に向かいたいと思うようになったのがサラ。彼女は変化を望んだんですね。どんなコミュニティにも現状維持を望む者と、変化を望む者、2種類の人間がいるとは思いますが、まさにそんな2つの派閥の縮図を見ているかのようです。

同じ時間・同じシチュエーションという、ある意味、「2人だけの世界」で生きてきた彼らだからこそ、この2人がぶつかるシーンは印象的でしたね。同じ日を何回も繰り返すことで、大切なものが何なのかを見つけようとしていましたから。

そもそも、絶え間なく変化していく日常でさえ、何が大切なのかを見つけ出すのは大変ですよ。僕だって未だに何が大切かなんてよくわかりませんもん。しかも、その大切なものって変化していく人もいますよね。それは時間が流れているからです。技術は進歩するし、ライフステージも変わるから、それに応じて大切なものも変化していくのが現実。

だから、サラたちのように、同じ日を繰り返すことで大切なものを見つけていくっていうのは究極のifですよ。まあ、時が動かない分、まわりに流されることなく、自分と向き合いやすいってのはあるかもしれませんけど。

幸せで穏やかな時を過ごすにもいいけれど、人生は終わりがあるから今が楽しいと思えるんじゃないかと僕は考えてるんですよねー。だから、いくら穏やかでも永遠に繰り返される今日よりは、波があってもやってくる明日以降の方が、僕は好きですね。だから、サラの決断は大いに共感できます。

でも、この物語で大きく変わったのは、そんなサラを見たナイルズなんですよね。作中で明言はしていませんが、ナイルズは途方もないぐらいに今日を繰り返してきた様子。もはやいろいろ達観した境地にいるので、愛とか他人とか、あらゆることが彼にとっては意味を感じないんです。そんな彼が、また人を愛するようになったのは、大きな変化でしたね。変わらない時間軸の中で、何に価値を置くのか、自分の身に置き換えて考えてみても面白いかもしれません。

また、偶然にも今はコロナ禍で家にいる時間が長いですよね。まさに変わり映えのしない日々というのは、作中の「永遠の今日」のようにも思えるので、そういう部分でも現実とリンクさせて楽しみやすいかなって気もします。

ちなみに、先ほど観た『21ブリッジ』にも出てJ・K・シモンズが今作にも出てます。もうJ・K・シモンズ祭りですね!(笑)


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