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長澤まさみの極悪非道な母親っぷりが狂気そのものだった『MOTHER マザー』
【基本情報】
製作年:2020年
製作国:日本
⠀ 配給:スターサンズ、KADOKAWA
【個人的順位】
鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:51/83
⠀ ストーリー:★★★☆☆
キャラクター:★★★★☆
映像:★★★☆☆
音楽:★★☆☆☆
【あらすじ】
シングルマザーの三隅秋子(長澤まさみ)は息子の周平(奥平太兼。幼少期は郡司翔)を連れて、実家にお金を借りに行くも、過去の返済も滞っていたことから断られる。
金策のあてが外れ、昼間からゲームセンターで飲んだくれていたところ、ホストの川田遼(阿部サダヲ)と出会って意気投合し、そのまま秋子の自宅に流れ込むことに。
周平を残したまま1週間家を空けることもザラだった秋子は、遼と結託して、世話になっていた市役所職員の宇治田治(皆川猿時)から金をせびろうとするも、誤って遼が刺してしまう。
逃げるようにラブホテルを転々とする中で、秋子は遼の子供を身籠るが、「堕ろせ!」と暴力を振るわれた挙句に出ていかれる。
時が経ち、16歳になった周平は母と妹の3人で路上生活をしていたところ、児童相談所の高橋亜矢(夏帆)の助けで簡易宿泊所に泊まれるだけでなく、フリースクールへも通えるようになった。
そこへ再び遼が現れるも、借金取りに追われており、またもや姿を消してしまう。頼れる人が周平しかいない秋子はついに息子と共に戻れない道へ進もうとする。
【感想】
「こんな長澤まさみ見たことない!」
これが正直な第一印象です。
親がクズという設定は特にものめずらしいものではありませんが、それを長澤まさみが演じるというのが必見ポイント。まさに彼女の新境地と言えるでしょう(僕は長澤まさみが好きなので余計に気になってました)。
『世界の中心で、愛をさけぶ』の純粋で素朴だった廣瀬亜紀の姿はそこにはなく、『コンフィデンスマンJP』の陽キャなダー子のカケラも感じない、クズ・オブ・クズな闇落ちした母親。このキャラクターの振り切りようは『初恋』のベッキーに通ずるものを感じましたね。
全編を通じて、長澤まさみの非情っぷりをまざまざと見せつけられるのですが、そのひどさは見るに堪え難く、子供は放ったらかしな上に金を工面するときだけいいように使い、さらに行く先々でいろんな男と関係を持ってしまうというどうしようもなさ。
僕はね、縁を切った方がお互いのためになるんじゃないかなって思ったんですが、こんな状況でも母親は息子を手放さず、息子もまた母親を憎むことがなかったんです。歪んだ愛情というか、共依存の関係というか。どこまでいっても母と子は切れないものなのかなっていうのと、あとはお互いに生活が困窮していて選択肢が少なかったっていうのが関係しているのだと思いました。
そして、阿部サダヲもこれまたひどい役どころです。自分のことしか考えておらず、妻と子供に罵声を浴びせ、暴力を振るうクソ野郎。彼自身には、コミカルなキャラクターのイメージが強いですが、あそこまで極悪非道な役もこなせる演技力は凄まじいものがありますね。
ただ、子供がいないからそう思うのかもしれませんが、個人的にはこの映画、他のダークな作品と比べたときに、そこまで精神がえぐられる感じはしなかったんですよね。
例えば、2018年にやってた『愛しのアイリーン』や『孤狼の血』の方がもっと痛ましかったし、同じ大森立嗣監督でも、2017年『光』や2019年『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った』の方がより深く心に残りました。
役者さんの持つイメージってのもあるんだろうでしょうが、暴力シーンが音だけで現場そのものを映さない箇所があったり、濡れ場に関しても肉欲感が薄くてエロさがあまりなかったのがその要因かなと思いました。どうせここまでダークにするなら、もう少しグチャミソしてもよかったかなーって気もします。