コメディとシリアスの間で成長する10歳の少年の物語『ジョジョ・ラビット』

2020年日本公開映画ランキング:4/8
ほっこり😊:★★★★☆
  感動😭:★★★☆☆
  笑い😂:★★★☆☆

これはいい映画だった。
いつもマーベルでお目にかかるタイカ・ワイティティとスカーレット・ヨハンソンを、マーベル以外で見れるというのが個人的な新鮮さがあった(笑)

【どんな映画?】

第二次世界大戦中のドイツを舞台に、ナチスに影響を受けた少年ジョジョ(ローマン・グリフィン・デイビス)と、ユダヤ人のエルサ(トーマシン・マッケンジー)との交流を描いたヒューマンドラマ。

【感想】

この映画を面白いと思った要素は2つあると思っています。
1つは、キャラクターとしてのジョジョのかわいさ。
もう1つは、お話としてのコメディとシリアスのバランスのよさ。

まず、ジョジョのかわいさから。
もうビジュアルがザ・白人のかわいい男の子って感じがあるんだけど、それだけじゃないんだ、彼の魅力は。
ジョジョには、“空想上の友達”としてヒトラー(タイカ・ワイティティ)がいるんだけど、失敗したり悩んだりしたときにはふらっと現れてアドバイスしてくれます(もちろん、ジョジョにしか見えません)。

それに勇気づけられてまた元気よくがんばる!みたいな、小さな少年の典型的な素直さ純朴さ全開なところがほっこりするんですよね。

どんなおっさんだって、昔はみんなああだったと思うんですが、在りし日の自分の姿に対する懐かしさみたいなものも、もしかしたらあるのかもしれない。

次に、お話の部分。
この映画は、戦争中かつユダヤ人が迫害されるというご時世ではあるものの、前半は比較的穏やかなシーンが多く、コメディ色も強いので、てっきり陽気なお話なのかなと思うわけです。(なお、外人ノリ的なコメディだから、正直日本人として爆笑するかって言われたらそこまでではないです)

それが、途中、ものすごくショッキングな出来事があって、それ以降、急にシリアスな様相を呈してきます。

特に、終盤の市街地戦がとても衝撃的で。聖歌隊のコーラスのようなバラードが流れる中、銃撃爆撃の嵐で人々が吹っ飛ぶといういわゆる「音と画の対位法(※)」と呼ばれる撮影手法があってこそだと思うのですが、前半が穏やかで笑いがある雰囲気だったからこそ、余計にその部分のダークさが際立っていました。聖歌隊のコーラスのようなバラードが流れる中、銃撃爆撃の嵐で人々が吹っ飛ぶといういわゆる「(※)」と呼ばれる撮影手法があってこそだと思うのですが、前半が穏やかで笑いがある雰囲気だったからこそ、余計にその部分のダークさが際立っていました。

※緊迫したシーンにあえて穏やかで明るい曲を流し、わざと音と映像を調和させない手法。

そして、この物語の後半部分は、空想に耽ってたジョジョ少年が、初めて現実と向き合わなければならないタイミングでもあり、子供から段階を踏んで大人になることを許されず、今後、否が応でも早く成長せざるを得ない状況になるんだろうなと思うと胸が締め付けられそうになりました。

なので、この映画は舞台としては第二次世界大戦下のドイツではあるものの、戦争の惨さを描いているのではなく、あくまでもそれによって引き起こされるジョジョとジョジョを取り巻く環境の変化を通じて、彼の成長を描き切った主人公の成長物語という見方の方が正しいのではないかなと思いました。

世間的な評価も高いようなので、ぜひ劇場へ足を運んでみてください。


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