葛藤の行く末にあるものをかみ締めた『クリード 炎の宿敵』

2019年1発目の映画です。
いやー、新年の幕開けにふさわしすぎる。
1本中1位!
そして、今さらながら『ロッキー』シリーズを初めて劇場で見たわ(笑)

この映画は、1985年公開の『ロッキー4/炎の友情』の流れを汲むため、
それと前作の『クリード チャンプを継ぐ男』は最低限見た方がいい。
(欲を言えばシリーズ1作目の『ロッキー』も)
それらを見ないと、あんまり感動ポイントがわからないかもしれない。

前提として、本作はロッキーが1作目と2作目で戦った、
ライバルであり親友でもあるアポロ・クリードが、
4作目でロシア人ボクサー・イワンとの試合で命を落とし、
今回そのアポロの息子と、イワンの息子が戦うというもの。
(敵討ちではなく、単に強い者同士が当たっただけ)

最新作を見る前にすべての過去作を見る派の自分としては、
ここ1週間ずっと『ロッキー』漬けだったので、
想いの丈をぶちまけてしまうけれど、
この映画はスポ根というよりヒューマンドラマでマジ感動した。
クリードの「なぜ自分は戦うのか」という思いや、
子供が生まれたことで背負うものが多くなった背景など、
主人公の葛藤が多いのポイント。

さらに敵対するイワンは、
4作目でロッキーに敗れたことで妻に捨てられ、
人々に見放され、かなり不遇な人生を送ったから、
その憎しみを息子に託し、憎悪に満ち溢れて戦いに来るという、
ある意味悲しい人たち。
ゆえに彼らにも同情してしまったよ。

これネタバレになっちゃうけど、
イワンが息子にタオル投げ込んだシーンは、
かつてロッキーがタオルを投げ込まなかったシーンとの対比だなと思って、
ちょっとうるっとした。

33年ぶりにイワン役のドルフ・ラングレンと
妻役のブリジット・ニールセンが出てきたのは
過去作見てる人なら興奮するだろうな。
ちなみに彼女は私生活において、
シルヴェスター・スタローンとちょっとだけ夫婦やってたりするけどw

そしてラストの終わり方もすごくよかった。
セリフと言い、カメラワークと言い、最高だわ。

先にも書いたように、今回はクリードの葛藤が強かったけど、
でもそれは、かつてロッキーが通った道とほとんど同じなんだよね。
なんで戦うのかとか、
もう自分だけの人生じゃないけどボクシングやりたいとか。

そう考えると、結局このシリーズはロッキーの人生そのものなんだと思う。
1作目、30歳でひょんなことから世界チャンプと戦い、
コミュ障でメガネっ娘だったエイドリアンと愛し合い、
強敵と戦い続け、子供も生まれ、老いてもなおボクシングと共に歩み、
そして『クリード』シリーズに入り、
弟子を取り、意志が受け継がれて行く。
まさにロッキーの生い立ちを綴っているように見える。

当のロッキー自身は、
有名になっても偉ぶらないで、妻と息子を何よりも愛し、
まっすぐ芯の通った本当にいい人でとても好感の持てるキャラクター。
ボクシングは強いけど、時に自分の進む道に思い悩んだり、
今あるものを失うことを恐れる弱さもあるけど、
その弱さを素直に認めることができるし、
そういうときは妻のエイドリアンが支えてくれるという
理想的な夫婦でもある。

そして、同時にすごく時の流れと哀愁を感じる映画シリーズでもあるんだ。
ロッキーは、ライバルで親友のアポロを若くして亡くし、
愛すべき師匠を亡くし、最愛の妻にも先立たれ、
その兄ともずっといっしょにいたけどそれも他界し、
息子たちは離れたところに暮らしていて、
まさに独り身のおじいちゃんになってしまう。
あんなに人々に愛されているのに、実は孤独なんだ、物理的に。
それは1作目からずっと見ていると如実に感じる。
ガタイこそいいものの、けっこうヨボヨボしているし、
それでいて独りでひっそり暮らしているから。
だからこそ、弟子のクリードは彼にとって弟子以上の存在でもあると思う。

いろいろ書いたけど、本当にいい映画シリーズだよ、これ。
シルヴェスター・スタローンがまだ売れてないときに、
実際のボクシングの試合から着想を得て、3日で脚本を書き上げ、
「自分が主演じゃないと売らない」
という強気の交渉で何とか製作にこぎつけ、
それが42年経っても続いてるからね。
あのとき他の役者で作らなくてよかったと思うわ。

あと映画とは直接関係ないけど、
シルヴェスター・スタローンのセリフが聞き取りづらいなと、
過去作を見ているときからずっと感じてて。
調べたら、彼が生まれるときに医師が鉗子の操作を誤って、
顔の左側の神経を傷つけたせいで、言語障害と顔面麻痺になったそうな。
それが原因でいじめに遭って、
いまだにトラウマがあるらしいってのを知って、
あんなに肉体派の俳優なのにそんな過去があったのかと驚いた。
屈強な戦士のイメージが強いから。

今後は『ランボー』シリーズの最新作や『大脱出』シリーズの最新作、
また『エクスペンダブルズ』シリーズも続編あるというから、
シルヴェスター・スタローンを見る機会が増えそう。

72歳にしてすごいよ。

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