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創業者の人柄と手腕に惹かれる『メイキング・オブ・モータウン』

【基本情報】

 原題:Hitsville: The Making of Motown
製作年:2019年
製作国:アメリカ・イギリス合作
 配給:ショウゲート

【個人的順位】

鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:10/140
 ストーリー:★★★★★
キャラクター:★★★★★
    映像:★★★☆☆
    音楽:★★★★☆

【あらすじ】

ビートルズやローリング・ストーンズが憧れ、日本を含む世界の音楽に影響を与え続けているモータウン。

創設者はベリー・ゴーディ・Jr.。1959年、家族から借りた800ドルを資金にタムラ・レーベルをスタートさせ、モータウンの歴史は幕を開けた。

その黄金期を彩ったのは、スティーヴィー・ワンダーやジャクソン5などのスターたち。

本作は、映画ビジネスに参入すべくLAに本社を移すまでの歴史や名曲誕生秘話を追っていくドキュメンタリー。

【感想】

これは面白かったです!音楽(特に洋楽)が好きな人やエンタメ系の仕事をしている人、組織づくりをしている人なんかは興味深く観れる映画だと思います。

僕が聴く音楽は90年代J-POPばかりで、洋楽なんてほとんど聴きませんし、ましてやモータウンが大ヒットを連発していた頃の曲なんてほとんど知りません。劇中56曲の音楽が流れていましたが、知っていたのは2曲のみです。

だから、僕は音楽云々というよりも、ヒットを連発していた背景には何があったのかを知りたくて観ました。

これが思った以上に魅力的な話で。まあ、要素としては複数あるものの、やっぱり創業者のベリーの存在が一番大きいんじゃないかと思います。世の中、才能あるアーティストはたくさんいるけれど、彼ほどのリーダーはいないとスモーキー・ロビンソンに言わしめるほどですから。

ベリー一族は曽祖父のときから起業家精神を叩き込まれていたせいか、本人は幼い頃から"目端が利く"と自覚していたと話しています。彼はモータウンを創業した後、かつて自動車工場で働いた経験を元に「生産ライン」というものを策定するんですね。つまり、アーティストの発掘・契約からレコード発売に至るまで、ただの部品だった機械が徐々に自動車に変わっていくように、ひとりの人間をアーティストとして作り上げる仕組みを作り上げたってことです。

できたばかりのモータウンはアメリカのミシガン州デトロイトにある一軒家を拠点としており、そこには実に多くの才能あふれる若者が出入りしていたようです。なんか、日本でいう"トキワ荘"みたいな感じでしたね。ああいう、作業場みたいなのは憧れがあります。僕はクリエイターでも何でもないので、あっても行けるだけのスキルが何もないんですけど(笑)

誰から指示されることでもなく、すべて自給自足で自由にのびのびと好きなようにできたのが、(ヒットを出せる)魔法が生まれる理由だったとか。

僕が一番驚いたのが、マナー講師にアーティストの養成を行わせていたこと。それは、フォークやナイフの使い方ではなく、自尊心を高めて堂々とした人間でいられるようにするためでした。アーティストの中には貧困層出身の人も少なくないので、セレブとコミュニケーションが取れるようにまでするところの徹底ぶりに脱帽です。

もちろん、すべてが順風満帆というわけではありません。時代的にも、ツアー時の激しい黒人差別もありましたし、人は自動車ではないから意見の食い違いでモータウンを去る人もいました。

でも、それらを乗り越えられたのは、やはりベリーの人柄や手腕ではないかと思うんですよね。

彼は黒人だろうが白人だろうが音楽には関係ないと常に言っており、人種にに関係なく雇用していたし、能力さえあれば女性でもどんどん幹部になれたそう。まだいろんな差別が色濃く残る時代に、それらを行っていたのはかなり革新的なのではないかと思います。

また、競争こそがチャンピオンを生むという理念から、社内でもいろいろ煽っていたようですが、そこでも愛情を忘れずに接することで、ギスギスした雰囲気ではなく、みんなで高みを目指そうとしていたのはいい職場だなと感じました。

さらに、彼は常に「次の段階」を考えていたと言っています。現状に甘んじることなく、革新がなければ停滞と同じだと捉えていたようで、その結果、映画にも積極的に関わっていきました。

本人は歌も歌えなければ作曲もできませんが、人の才能を見抜く力はあったと自負しているようで、それを最大限引き出すことをミッションとしていました。

彼のように音楽(事業)を愛し、人を愛する人の元には、たくさんの才能が集まるんですね。彼もまたいっしょに仕事をする人たちを"家族"と思って接していました。こういう人の下で働けるとは幸せなことですよね。

ちなみに、いろんなアーティストが出てきて、みんなすごく歌がうまいんですけど、幼き日のスティーヴィー・ワンダーとマイケル・ジャクソンは素人が聴いてもレベルが違いすぎるというのがよくわかりました。


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