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"好き"より前に出てきてしまう感情に人間らしさを感じる『詩人の恋』

【基本情報】

 原題:시인의 사랑
 英題:The Poet and the Boy
製作年:2017年
製作国:韓国
 配給:エスパース・サロウ

【個人的順位】

鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:127/175
 ストーリー:★★★☆☆
キャラクター:★★★☆☆
    映像:★★★☆☆
    音楽:★★★☆☆

【あらすじ】

自然豊かな済州島で生まれ育った詩人のテッキ(ヤン・イクチュン)は、
ここ数年スランプだ。稼げない彼を支える妻ガンスン(チョン・ヘジン)が妊活を始めたことから、テッキの人生に波が立ち始める。

乏精子症と診断され、詩も浮かばず思い悩む彼を救ったのは、港に開店したドーナツ屋で働く美青年セユン(チョン・ガラム)だった。

もっと彼を知りたい。30代後半にして初めて芽生えた“守ってあげたい”という感情を隠しながら、テッキは孤独を抱えるセユンと心を通わせ、彼の人生は思わぬ方向へと進んでいく。

【感想】

今年多くないですか、ボーイズラブ作品。

この映画もおっさんと美少年のボーイズラブと言ってしまえばそれまでなんですが、純粋な恋愛映画というよりは、恋愛よりも先に別の感情が出てきてしまうという、なかなかに複雑な想いが交錯する内容だったので、他とはまた少し違う雰囲気を持った映画だなと感じました。

テッキは初めての恋愛らしい恋愛の相手が男だということに戸惑いを隠せず、しかも最初は美少年がゆえの一目惚れみたいなものだったので、当に好きなのかどうかってのがわからない状態だったんですよね。

歳も大きく離れているし、好きというより守ってあげたいという親心みたいなものも混じっていたんじゃないかと僕は思いました。

一方、セユンは父の介護もありお金に困っているという事情があったので、テッキがいろいろ支援してくれることに甘えていた部分があるんです。途中から、テッキの気持ちには気づいてはいたっぽいですが、彼が結婚しているからこそ、一歩踏み出せず、一定の距離感を保っていました。

そう、ここがこの映画の印象的なところで、この二人、ベッタリしないんですよね。恋愛的なニュアンスで身体的に触れ合うところは多分なかったんじゃないかなーと思います。それは、テッキが既婚者だったってのもありますが、やっぱり「好き」という感情の中に、テッキは親心みたいなものが、セユンは甘えみたいなものがあったからなんじゃないかなーって思うんですよね、特に最初の方は。

だんだんお互いの気持ちは大きくなっていくんですが、特にテッキの方が熱を上げていたので、抑えきれない想いが爆発してしまうところもあります(笑)ただ、ロマンチックでドラマチックな二人だけの恋愛というよりも、ポエム寄りの人間愛に近い印象でした。ここは観る人によってだいぶ解釈変わりそうですけど。

ちなみに、冒頭は『朝が来る』と似ていているんですよ。子供を作ろうとしたら、夫の精子に異常があることが発覚するという始まりで。ただ、同じ流れなのに、妻のキャラクターやBGMの使い方によって、ややコメディ感があるので、作り方で印象を180度変えることができるいい例だと思いました。


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