いろんな解釈が生まれそうな『水を抱く女』
【個人的な評価】
2021年日本公開映画で面白かった順位:42/57
ストーリー:★★★☆☆
キャラクター:★★★☆☆
映像:★★★☆☆
音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★☆☆☆
【以下の要素が気になれば観てもいいかも】
ラブストーリー
ミステリー
精霊
水
ヒロインの失踪
【あらすじ】
ベルリンの都市開発を研究する歴史家ウンディーネ(パウラ・ベーア)。彼女はアレクサンダー広場に隣接する小さなアパートで暮らし、博物館でガイドとして働いている。
恋人のヨハネス(ヤコブ・マッチェンツ)が別の女性に心移りし、悲嘆にくれていたウンディーネの前に、愛情深い潜水作業員のクリストフ(フランツ・ロゴフスキ)が現れる。数奇な運命に導かれるように、惹かれ合う2人だったが、次第にクリストフはウンディーネが何かから逃れようとしているような違和感を覚え始める。
そのとき、彼女は自らの宿命に直面しなければならなかった…。
【感想】
邦題だけだとわかりづらいですが、RPGで遊んだことのある人なら一度はその名を耳にしたことであろう水の精霊ウンディーネ。本作は、そのウンディーネをモチーフにしたラブストーリーです。
こう書くとね、ファンタジー感あふれる映画だと思われそうですが(僕もそうでした)、実際はもっと謎めいた内容で、人によって解釈が分かれそうな映画でしたねー。
冒頭、ウンディーネとヨハネスの別れ話から始まるんですが、彼女は「別れたら殺すから」と言うぐらいのややヒステリックを思わせる人物んですよ。「こわっ」って思っちゃいました(笑)そんな彼女が新しくクリストフという潜水作業員と出会ってからは、元カレと今カレの間でやきもきするオーソドックスなラブストーリーとして描かれます。変にストーカーになるとか、そういう話ではないですよ。
しかし、問題はそこからなんですよね。ネタバレを含んでしまうので、映画観たい人はここで終わりにしてください。
ある晩、電話で口論をしたウンディーネとクリストフ。その翌日に、クリストフは事故で脳死状態に陥るんですよ。「昨晩、ケンカしたばかりなのに」って思うウンディーネですが、実は口論した時間帯っていうのは、すでにクリストフが脳死に陥っていた後なんですよね。
で、彼女は「すべてあんたのせい」と言わんばかりに、自宅プールで泳ぐヨハネスを溺死させ、自分もクリストフの仕事場であった湖の奥底へと姿を消すんです。と、同時にクリストフは目を覚まします。
はて、これはどう捉えるのが正解なんでしょう(笑)
クリストフとの口論はお別れに来た魂なのか、それとも何か神がかった力が働いたのか。そして、なぜ彼は目覚めたのか。これはもう謎なんですよね。作中は現実的な世界観であり、特に何か明言されているわけではないので、完全に憶測になってしまうんですが、僕はやっぱりウンディーネは水の精霊そのものだったと思います。
そして、元カレのヨハネスを殺すことで、その命をクリストフに移し替えたんじゃないでしょうか。その力を発揮するために、彼女は水と共に生きる必要があり、湖の奥底に還っていったっていう。
そして、ウンディーネ自身は幻でも何でもなく、確かに存在はしているんですよ。その証拠に、彼女が湖に消えて行った後、彼女と関りのあった人たちはみな、彼女がいたということは認知していましたから。
クリストフも怪我からの復帰後、湖の底で再びウンディーネを目にしています。ただ、ビデオカメラには映っていないので、もはや彼にしか見えない人ならざる存在になったのかなーなんて勝手に思っていますが。。。
となると、やっぱりこの映画はファンタジーってことになりますね(笑)
ロマンチックかつドラマチックな展開が少なく、世界観の割には地味な雰囲気の映画ではあるんですが、静かに漂う"水"とは合っていたかなって感じました。
ちなみに、この映画、精霊をモチーフにした三部作の1つになるらしく、次は"火"が題材になるそうですよ。