本にはそれを書いた人の熱量がいつまで残るんだと思った『パブリック 図書館の奇跡』
【基本情報】
原題:The Public
製作年:2018年
製作国:アメリカ
⠀ 配給:ロングライド
【個人的順位】
鑑賞した2020年日本公開映画ランキング:62/102
⠀ ストーリー:★★★★☆
キャラクター:★★★☆☆
映像:★★★☆☆
音楽:★★★☆☆
【あらすじ】
アメリカのオハイオ州シンシナティの公共図書館で働くスチュアート(エミリオ・エステベス)。真面目に働いていた彼は、ある日、常連の利用者であるホームレスから思わぬ提案を受ける。
「今夜、ここを占拠したい」。
しかし、それは決して悪いことをするためではなかった。記録的な大寒波によって路上で凍死者が続出しているにも関わらず、市の緊急シェルターがいっぱいで行き場がないからだ。
約70人のホームレスの苦境を察したスチュアートは、図書館の入り口を閉鎖し、立てこもった彼らと行動を共にする。
それは避難場所を求める平和的なデモだったが、政治的なイメージアップをもくろむ検察官やメディアの偏った報道よって、スチュアート自身が人質をとった容疑者に仕立てられてしまう。
やがて、警察の機動隊が突入することに決まり、追いつめられたスチュアートとホームレスたちは驚愕の行動に出る。
【感想】
予告のときから思っていたんですけど、設定が面白いですよね、これ。
寒さをしのぐためにホームレスたちが図書館を占拠し、彼らと行動を共にした図書館員が偏った報道によって容疑者に仕立て上げられてしまうって。
一瞬コメディかな?って思ったんですが、映画を観ていくと、これはホームレスたちが自らの存在を訴えるための戦いなんだということがわかります。
日々、寒さによってホームレスが亡くなるケースが増えているものの、結局多くの人にとってはすぐに忘れ去られてしまうんですよね。だからこそ、このデモを通じて自分たちの存在を世間に知ってもらおうとするんですが、そのホームレスたちの純粋な想いがちょっと感動的で。「Make some noise!(声を上げろ!)」って、彼らは一致団結するんです。
ちなみに、彼らの中には退役軍人もいて、散々国や国民のためにがんばってきたのに、今はホームレスとして生活せざるを得ないという状況も、アメリカ社会の現実を突きつけているような気がしました。アメリカ社会には詳しくないですが、割とあることなんでしょうか。
主人公スチュアートもね、一見ごく普通の図書館員なんですけど、彼の過去および本によって救われたエピソードも、図書館で働く動機づけとしてすごく腹落ちしやすいし、彼が自己中なレポーターからの質問への回答として、ジョン・スタインベックの『怒りの葡萄』の一説を引用した主張はかっこよかったです。
僕は活字が苦手で普段本をまったく読まないんですが、文字や文章によって記録された過去の人たちの主義や主張、想いというのは、後世になってもその熱量を損なわないんだなということを感じました。
ただ、立てこもった後は面白いのだけど、それまでの話がやや冗長だったので、もっと立てこもるまでを早めてもよかったのかな?って思ったりもします。
あと、気になったのは、図書館ってホームレスいたっけ?というもの。
僕は中学生のとき以来、街の図書館を利用していないのですが、ホームレスの人が普通に出入りしているってのはアメリカならではなのでしょうか。
彼らは開館前から入口で並んでいて、開館したらトイレで歯磨きや髭剃りとかしてるけど、日本じゃこれは無理だよなって思いました(笑)
全体的に心温まる話で平和な気持ちになれるので、ちょっと癒されたいときなんかには観てもいいかもしれません。