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"普通"とは何だろうかについて考えさせられる『僕が跳びはねる理由』
【個人的な評価】
2021年日本公開映画で面白かった順位:46/62
ストーリー:★★★☆☆
キャラクター:★★★☆☆
映像:★★★☆☆
音楽:★★★☆☆
映画館で観るべき:★★☆☆☆
【以下の要素が気になれば観てもいいかも】
ドキュメンタリー
自閉症
【あらすじ】
『自閉症の僕が跳びはねる理由』は、会話のできない自閉症という障害を抱える作家・東田直樹がわずか13歳で執筆したエッセイ。
この映画は、自閉症者の内面がその行動にどのような影響を与えるか、また彼らにとって自閉症という障害が意味するもの、そして彼らの世界が、"普通"と言われる人たちとどのように異なって映っているのかを、世界各地の5人の自閉症の少年少女たちの姿やその家族たちの証言を追って明らかにしていくドキュメンタリー。
【感想】
とても興味深い内容でした。自閉症を医学的にどういうものなのかを説明する内容なのかと思いきや、そうではなく、自閉症を持つ子供やその家族の生活に密着した形となっています。
自閉症というと、映画やドラマではサヴァン症候群の設定が多く、自閉症=天才的な能力を発揮すると混同されがちではあるけど、決してそうではないです。サヴァン症候群にならない自閉症の方もいらっしゃいます。
ただ、彼らが普通の人(もはや"普通"とは何なのかということを考えさせられる映画でもあるのですが)と違ったモノの見方をすることは事実ですね。
見えている風景は、普通の人も自閉症の人も同じですが、その受け取り方が大きく異なるそうです。普通の人は全体を見てから部分を見るのに対し、彼らは部分が先に飛び込んできて、その後で全体を見るようなのです(全員がそうではないかもしれませんが)。
また、自分の思考を言語化することが苦手な人も多く、昔は自閉症の人たちは知能がないといった認識もあったそうだし、発展途上国では悪魔扱いされてきた悲しい歴史もあります。
でも、それは間違っているんですね。僕も恥ずかしながら全然知りませんでしたが、彼らは感覚的な面が強く出ているだけで、思っていることや考えていることは普通の人とまったく同じなんです。その証拠に、「文字盤」と呼ばれるアルファベットが書かれた板を使うと、格段にコミュニケーションしやすくなるんですよ。もちろん、彼らに意志がないと思っていたわけではないですが、そこまで普通の意志表示をできるんだということが意外だったんです。
それは、ベンとエマのエピソードが印象深いことにもつながります。彼らは自閉症を持つ者同士で、付き合いは長いものの、言葉によるコミュニケーションはずっとできていなかったんですよ。それなのに、文字盤を使ってお互いのことを聞いてみると、2人とも友人と認識しました。
エマはベンに対して、「騒がしい私によく耐えていてくれる」。
ベンはエマに対して、「初めてできた友達」。
言葉で伝えられなくても、お互いに対する想いはしっかりあったってことですね。
このように、自分の知らなかった事実が知れるだけでも、このドキュメンタリーはとても価値があると思います。
ところで、普通ってなんでしょうね。作者の東田直樹さんも、幼い頃は普通の人になりたいと思ったそうだけど、今となっては仮に自閉症が治る世界が来たとしても、今のままでいたいと語っていました。なぜなら、それが彼にとっての普通だから。
『まともじゃないのは君も一緒』でも、普通じゃない主人公が恋愛に四苦八苦する様子が描かれていましたが、趣味・嗜好が多様化する現代においても、普通じゃないと白い目で見られることは多いですよねー。結局は、数が多い属性の人が普通を作り、彼らにとって生きやすくなるよう街も社会も作られていくから、自閉症に限らず、マイノリティの人からすると生きづらかい部分はあるでしょう。
数が多い方がそれだけ利用頻度も増えるし、それは自然なことだとは思うけれど、マイノリティな人にも理解や共感が向けられ、少しでも生きやすい社会になるといいんですが。
ちなみに、この映画を観ると、この前観た『旅立つ息子へ』で自閉症を持つ人物を演じたノアム・インベルの演技はすごかったなと改めて感じます。